研究内容:サボテン・多肉組
事業化・国際協力活動
カンボジア地雷原跡地での産業創出支援(IOS株式会社・CMAC・堀部研究室)
本事業は、サボテンの栽培技術をカンボジア農村部に普及させ、商業化し、地域の生活水準を向上させる事を目的にしています。カンボジアの政府系地雷除去実施機関「CMAC(Cambodian Mine Action Centre)」が栽培等の諸作業の実施主体になります。堀部研究室(堀部貴紀)は外部専門家として本事業に参加し、助言・指導・事業提案・研究の実施等を担当しています。
↓現地を訪問し栽培指導を実施
研究内容
多様な環境ストレス耐性、高い生産性、健康機能性を併せ持つ食用ウチワサボテンは乾燥地でも生産できる作物やモデル植物として大きなポテンシャルを有しています。サボテンがもつ驚異的な能力を科学的に解明することは、科学的知見の蓄積に加え、植物の環境ストレス耐性向上、食糧増産、砂漠化防止、地球温暖化の緩和など地球規模の課題解決に貢献します。
①サボテンがもたらす持続可能性 ―サボテンの力を地球温暖化緩和に活用―
サボテンは空気中の二酸化炭素(CO2)の一部をバイオミネラル(CaC2O4)の形で体内に蓄積します。通常の植物は、植物体が枯れると体内に固定されたCO2は再び空気中に戻ってしまいますが、上記の性質によりサボテンは枯死した後も長期間にわたり炭素を固定できます。つまり、サボテンはCO2の長期固定などの脱炭素技術に活用できる可能性が十分にあります。私の研究室では、バイオミネラルの形成メカニズムや生体内での機能、環境条件との関連性、効率的な炭素固定技術の開発などを実施しています。
1) サボテンの炭素固定能力の調査
2) バイオミネラルの形成メカニズムおよび生体内における機能の調査
3) サボテンを利用した環境問題解決(地球温暖化など)の可能性検討
おまけ(サボテンの内部構造) きれいですね!
①表皮付近(表皮組織内に多くのシュウ酸カルシウム結晶が観察できます。皮下組織には緑色のクロロフィルが。)
②刺座付近(左側に維管束が見えます。右側の青く染まっているのはトライコーム。)
③髄にある貯水組織(クロロフィルは見られませんが、時折粘液細胞やシュウ酸カルシウム結晶が見られます)
②生産性・機能性・持続性を向上させる栽培技術の開発
当研究室ではサボテンの栽培技術の開発も行っています。これらには、水耕栽培や栽培環境制御による生産性・機能性の向上技術や、有機栽培による環境負荷低減等が含まれます。当研究室の研究成果は、カンボジア地雷原の復興事業(サボテンの栽培技術をカンボジア農村部に普及させ、商業化し、地域の生活水準を向上させる事を目的)にも役立っています。サボテンは明確な環境耐性、栽培の容易さ、用途の広さなど、気候変動に対応した持続可能な食料システムの構築に求められる性質を数多く備えています。様々な目的に応じた栽培技術が開発されることで、サボテンの世界的な利用が推進されます。
1) 人工光型植物工場における食用サボテンの栽培法確立
2) 食用サボテンの水耕栽培法の確立
3) 食用サボテンの生育促進技術の開発
4) 異種サボテンとの接ぎ木が穂木の生育等に与える影響の解析、など
①植物工場での食用サボテン生産 ②低コスト水耕システムの開発 ③ホルモン処理による茎節発生促進
⑤大学に設置されているガラス温室 ⑥生育調査を行う学生たち
③新たな有用形質を持った食用・観賞用サボテンの育種
1) EMS処理による突然変異を利用した食用・観賞用サボテン有用品種育種
2) コルヒチンを用いた観賞・食用サボテンの倍数性育種
突然変異育種(種子)
④ウチワサボテンを利用したファイトレメディエーション技術の開発、重金属耐性機構の解析
ファイトレメディエーションとは、「植物の機能を利用して環境修復および汚染浄化を行うこと」を意味し、具体的には植物体内に重金属などの環境汚染物質を吸収そして蓄積させ、植物体を除去することで環境を浄化する手法が最も広く用いられている。植物を利用したファイトレメディエーションでは低コストで広範囲の汚染サイトへの適用が可能であると同時に、メンテナンスが不要で太陽エネルギーを利用しているため環境負荷が小さいなどの利点があり、土壌修復技術として注目されている。
ウチワサボテンは①環境ストレス耐性が高い、②栄養繁殖が容易、③バイオマスが大きい、④成長が早いなど、ファイトレメディエーションに適した性質を多く持ち、これまでの我々の研究で有害重金属に対する抵抗性が非常に強いことが分かっている。従って、ウチワサボテンは乾燥地などにおいても土壌重金属汚染の除去に利用できる植物として期待できる。
本研究では、ウチワサボテンのファイトレメディエーションへの応用可能性を検証するとともに、重金属耐性機能の解明を目的とした実験を行う。
⑤ミネラルを高濃度に含む「高機能性ウチワサボテン」の栽培
多肉植物である食用サボテンは茎内に養水分を多量に蓄積できる貯水組織を持ち、環境中から吸収した重金属などの物質をこの貯水組織内に隔離・蓄積することが分かっている。本研究ではこの性質を利用し、水耕培養液の組成を制御することで、カルシウム・マグネシウム・鉄・亜鉛含量を高めた食用サボテンの生産を目指す。本研究による成果は健康的な食生活や予防医学の発展につながるとともに、食用サボテンという新しい農産物の産業化も促進するものであり、国内農業の活性化に大きく貢献する。
⑥研究基盤技術の開発(組織培養、遺伝子操作、育種期間短縮、など)
ウチワサボテンは可塑的なCAM型光合成や驚異的な環境ストレス耐性、高い生産性など特徴的な形質を多く有しており、植物生理学的な研究を行う上でも非常に興味深い実験材料である。しかし、サボテンの多くは遺伝子組換え技術など分子生物学的研究に必要な技術が確立されていない。本研究ではウチワサボテンの組織培養・遺伝子組換え技術などの基盤的技術を確立し、サボテンの持つ特殊機能のメカニズムの解明を目指す。
1) 培養技術の確立(茎頂培養、カルス化、再分化系確立、など)
2) 食用サボテンの遺伝子組換え技術の確立
3) サボテンの育種期間短縮技術の開発(早期開花)
4) サボテンの環境ストレス耐性機構の解明
学生さんへ:多様な視点で物事を見よう!
当研究室では「市場から遺伝子まで」をスローガンに、農家・企業人・自治体職員・国際機関職員・研究者・政治家など、多種多様な人たちとコミュニケーションを取りながら研究や事業を進めています。扱う研究テーマや活動も、地域の活性化から遺伝子の機能解析まで多岐に渡ります。様々な視点で物事を捉えることで、新しい発見があります。型にはまらずに、自由な発想で活動すると良いと思います。まずはぜひ、「夢中になれること」を見つけて下さい。
春日井祭りでサボテン学習コーナーを出展 サボテン料理の試食会(レシピ開発)
主な実験材料
食用ウチワサボテン(植物工場、水耕栽培、育種、培養)
観賞用サボテン(育種、培養、生育促進)
観賞用花き(サボテン、多肉植物)
堀部研の産学官連携活動
当研究室では、日本国内・アジア地域での食用サボテンの利用拡大を目標にしています。
春日井市、春日市観光コンベンション協会、国内外の多くの企業と連携した活動を多数行っています。