堀田典生 中部大学生命健康科学部 運動生理学研究室

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科学研究費補助金報告2015(一般の方へ)

はじめに

2014年度から継続で2015年度も科学研究費補助金(科研費)をいただき研究を行うことができました.皆様どうもありがとうございました.

背景

 近年,ロコモティブシンドロームの対策として筋力トレーニング(いわゆる筋トレ)が強く勧められています.事実,アメリカスポーツ医学会も健康の維持・増進のために,ジョギングやウォーキングなどの有酸素運動に加え,週2日程度筋トレをすることを推奨しています.しかし,運動をする場合,酸素運搬のために,血圧は上昇しなければいけないのですが,筋トレでは,活動している筋肉が必要とする酸素の供給以上に血圧が上がっていると考えられています.

 その理由の一つに,筋トレ中に筋が酸性環境(アシドーシス)になることが考えられます.運動時の血圧や心拍などの循環の調節に関わるような求心性の神経は,酸性の環境に対して反応することは稀ですが,酸性の環境によって機械的な刺激(筋の収縮や伸張などの動き)に対して敏感になり(文献1),血圧を過度に上昇させていると予想されます.筋トレのときの過度な血圧上昇を抑えるものを見つければ,より安全に筋トレができると思われます.

 もしも,コンドロイチン硫酸という物質によりその作用を抑制することを示せれば,筋トレ中の過剰な血圧増加応答を抑えることにつながり,より多くの方がロコモティブシンドローム予防や健康の維持・増進のための筋トレに取り組めることにつながるとの背景の下に研究を実施しています.

 そして,ラットの神経筋標本を用いた実験では,コンドロイチン硫酸は,運動時の循環応答に関係する筋肉からの求心性神経は酸による機械反応増強作用を抑制してくれるということを昨年報告しています(参考1).

文献1 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25452124別サイトにリンクします

参考1 https://www3.chubu.ac.jp/faculty/hotta_norio/hot_lab/kaken%202014/別サイトにリンクします

2015年度に取り組んだこと

1) ヒトへの応用を考慮して,ラットの神経筋標本に用いるコンドロイチン硫酸の濃度を低くしても同じ効果が得られるのか検討しています.2016年度にもちこしの課題です.

2) ダブルブライド法[実験する人と被検者のバイアス(偏見や先入観)を防ぐ方法]を用いて,被検者の内誰がコンドロイチン硫酸を摂取してだれが摂取していないか分からない状態で実験をしました.

数週間コンドロイチン硫酸,あるいは,プラセボを飲み続けていただき,筋トレ中の血圧応答を測定しましたが,2016年度にもちこしの課題です.

http://move.isc.chubu.ac.jp:8080/hotlab/horinori.html動画ファイル

動画をご覧下さい.左指で血圧を非観血的(被験者の負担少なく安全に)に連続的に測定しています.右上腕からも血圧をモニターして,きつめの筋トレ中の血圧をみています.筋トレは筋肥大が期待できるような強度,回数,インターバルを設定しています.

利益相反,研究者の方へ

本研究におけるコンドロイチン硫酸の一部は,ゼリア新薬工業株式会社様からの供給を受けていますことを申告します.

上記の内容は一般の方向けに可能な限り分かりやすく説明しようと心がけました.学術的には不適切な言い回しが多々あると思いますが,学会発表や論文としても報告して参りますので,科学者・研究者の方はそちらをご覧いただければ幸いです.

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