堀田典生 中部大学生命健康科学部 運動生理学研究室

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科学研究費補助金報告2013(一般の方へ)

はじめに

私は、2012年度に引き続き、2013年度も科学研究費補助金(科研費)をいただき研究を行うことができました。皆様どうもありがとうございました。

血管の柔らかさと運動の関係 (昨年からの続き)

健康の維持・増進のために動脈の柔らかさを保つことは重要と考えられています。ジョギングやサイクリングなどの有酸素運動を継続的に行うと血管は柔らかくなる方向に向かっていくことが分かっています。一方で現在、アメリカスポーツ医学会は健康の維持・増進のためには、有酸素運動だけでなくレジスタンストレーニング(いわゆる、筋トレ)も実施することを推奨していますが、比較的高強度の筋トレを継続することで、血管は逆に固くなる方向に向かっていくことを示すことが報告されています。しかし、それを支持しない論文もいくつかあり、この件はまだ決着がついていないように思われます。

血流制限と筋トレの組み合わせが動脈のやわらかさや機能に及ぼす影響

体肢(腕や脚)の根元を加圧し、血流制限しながら筋トレをすることで(加圧トレーニング)、“比較的軽運動”に相当する負荷量でも効率的に筋肥大・筋力の 増加が期待できることが知られていますが、健康ととても密接する動脈にどのような影響を及ぼすのでしょうか?

そこで、今回私達は、被検者の方々をランダムに対照群と血流制限群に振り分け、4週間のアームカール運動を実施しました。強度、回数、インターバルは、両群の筋力増強の幅が同じになるように設定しました。血流制限群のみ上腕の付け根を加圧しながら実施しました。

最大筋力、最大挙上重量、上腕屈筋群の厚み、上腕周囲長は両群とも同じように増加しました。血管内皮機能の評価のために血流依存性血管拡張反応(FMD)検査というものを実施しましたが、両群ともに顕著な変化はみられませんでした。しかし、面白いことに、血圧-脈波検査から算出された動脈硬化指数は、対照群では低下し、血流制限群は増加傾向でした。

この結果は、血流制限を行いながらの筋トレは、血管を硬くしてしまう恐れがあるかもしれないということを示唆しています。ただし、本研究では、筋トレのみの対照群にて、動脈がやわらかくなる方に向かうという、これまでの研究と一致しない部分もあります。結論を出すにはさらなる研究の積み重ねが必要だと考えられます。

FMD検査の様子

血圧-脈波検査の様子

FMD検査について

FMD検査.jpのHPをご覧ください。

http://www.fmd-kensa.jp/pg7.html

注意

加圧トレーニングは、加圧トレーニングを指導できる有資格者にのみ、指導を受けることができ ます(詳細は東京大学医学部附属病院22世紀医療センターの研 究寄附講座のホームページを参照ください)。私たちはトレーニングの指導ではなく、研究の一環として実施しております。

科学者・研究者の方へ

上記の内容は一般の方向けに可能な限り分かりやすく説明しようと心がけました。学術的には不適切な言い回しが多々あると思いますが、学会発表や論文としても報告して参りますので、科学者・研究者の方はそちらをご覧いただければ幸いです。

 

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