堀田典生 中部大学生命健康科学部 運動生理学研究室

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科学研究費補助金報告2012(一般の方へ)

はじめに

私は、2011年度に引き続き、2012年度も科学研究費補助金(科研費)をいただき研究を行うことができました。皆様どうもありがとうございました。

血管の柔らかさと運動の関係

健康の維持・増進のために動脈の柔らかさを保つことは重要と考えられています。ジョギングやサイクリングなどの有酸素運動を継続的に行うと血管は柔らかくなる方向に向かっていくことが分かっています。一方で現在、アメリカスポーツ医学会は健康の維持・増進のためには、有酸素運動だけでなくレジスタンストレーニング(いわゆる、筋トレ)も実施することを推奨していますが、比較的高強度の筋トレを継続することで、血管は逆に固くなる方向に向かっていくことを示すことが報告されています。しかし、それを支持しない論文もいくつかあり、この件はまだ決着がついていないように思われます。

血流制限トレーニング

ところで、体肢(腕や脚)の根元を加圧しながら筋トレ(加圧トレーニング)をすることで、“比較的軽運動”に相当する負荷量でも効率的に筋肥大・筋力の 増加が期待できることが知られています。

有酸素運動に血流制限を加えれば筋トレと同じ効果が得られて血管も固くならない?

そこで、今回私達は、以下の2点に着目してみました。(1)有酸素運動は血管を柔らかくする方向へ向かわせる、(2)血流制限トレーニングは低負荷でもその恩恵を受けることができる。従って、有酸素運動に血流制限を加えれば筋トレと同じ効果が得られて血管も固くならないと考えました。その結果、8週間の血流制限を加えた自転車トレーニングにより、筋トレと同じように筋力の増加が認められました。しかし、CAVIという動脈硬化指数を用いた検査の結果、トレーニングの前後でCAVIの値は変わりませんでしたので、このトレーニングにより血管が固くなる方向に向かっているとは判断できませんでした。ただし、血管の評価の仕方はいくつかあり、今回の1つの指標だけで、このトレーニングでは血管は固くならないと言うには慎重になったほうが良いと思っています。これからも研究を続けていきます。

トレーニングの様子

大腿部の付け根を血流制限しています。腕の圧迫帯は血圧測定用です。

CAVIについて

フクダ電子のHPをご覧ください。

http://www.fukuda.co.jp/public/examination/

注意

加圧トレーニングは、加圧トレーニングを指導できる有資格者にのみ、指導を受けることができ ます(詳細は東京大学医学部附属病院22世紀医療センターの研 究寄附講座のホームページを参照ください)。私たちはトレーニングの指導ではなく、研究の一環として実施しております。

科学者・研究者の方へ

上記の内容は一般の方向けに可能な限り分かりやすく説明しようと心がけました。学術的には不適切な言い回しが多々あると思いますが、学会発表や論文としても報告して参りますので、科学者・研究者の方はそちらをご覧いただければ幸いです。

 

 

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