中部大学の研究活動

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謎の光るミミズは、日本の浜辺にどうやって来たの? ― タイの「光らない」ミミズが解き明かした、その進化の歴史 ―(大場裕一教授ら)

【2021年4月19日】

プレスリリース

中部大学応用生物学部の大場裕一教授別サイトにリンクしますの研究グループは、タイ王国チュラロンコン大学との共同研究で、日本の砂浜に棲む発光ミミズの起源と発光の役割に関する新しい知見を得ました。

発光するミミズは世界に数種類が知られていますが、その一種が日本の砂浜に広く分布していることはあまり知られていません。この発光ミミズは学名「ポントドリルス・リトラリス」(Pontodrilus litoralis)、和名「イソミミズ」といいます。見た目は普通のミミズですが、刺激を受けると体から黄緑色に発光する粘液を放出します。松島(宮城県)より南の太平洋側と瀬戸内海から沖縄に広く見られ、砂浜をスコップで掘ると簡単に見つけることができます。

イソミミズは、日本に限らず世界中の砂浜に分布していますが、遺伝子解析の結果、日本のイソミミズは東南アジアから海流に乗って何度か渡って来たことが推測されていました。

今回、我々は東南アジアにしか分布しないイソミミズの近縁種「ポントドリルス・ロンギシムス」(Pontodrilus longissimus)に注目しました。本種は、イソミミズと同属で非常に近縁であるにもかかわらず、タイとマレーシアにしか分布していません。そして、我々が調べてみたところ、本種(仮に「マレーナガイソミミズ」と名付けます)はまったく発光しないことがわかりました。発光する生物と同属に分類されるほど近縁であるにもかかわらず発光しない種というのは非常に珍しいため、我々はこの点に着目しました。

実は、発光するイソミミズと発光しないマレーナガイソミミズは、東南アジアでは同じ砂浜に棲んでいますが、棲んでいる砂の深さが異なります。イソミミズは砂の表面に多くいますが、マレーナガイソミミズは10センチ以上の深いところに棲んでいます。砂の浅いところは海藻などの漂着物が多くミミズの食料が豊富ですが、ミミズを捕食する肉食生物もたくさんいます。一方で深いところは、餌資源は少ないけれど外敵も少なくミミズにとって安全な環境と言えます。

つまりイソミミズは危険を冒して餌の豊富な場所(砂浜の浅いところ)に進出したと考えられます。そして、この進出のきっかけが「光ること」だったと考えられます。

愛知県南知多郡の河和海岸でイソミミズを探したところ、やはり砂の表面にいました。さらに、そこにはハマベハサミムシという夜行性の肉食昆虫もたくさんいることに気がつきました。一般に、光るミミズの発光の役割は、敵からの攻撃を避けるためだと考えられています。そこで、イソミミズとハマベハサミムシを暗いところで一緒にして行動を見てみることにしました。

その結果、非常に興味深い現象が観察されました。ハマベハサミムシは、イソミミズを見つけるとたちまち大アゴやおしりのハサミを使ってイソミミズを激しく攻撃しはじめました。すると攻撃を受けたイソミミズは体から発光する粘液を放出しました。この粘液はネバネバしていてハサミムシの大アゴや前足に粘着します。すると、ハサミムシは攻撃を止めて、しきりに付着した粘液を取り除こうとしました(この様子は論文中の参考資料と、同様の関連動画をYouTubeでも公開しています)。

関連動画(YouTube)
https://www.youtube.com/watch?v=nnQ03CLguKc

以上の結果から私たちは次のような進化のシナリオが考えられます。

  1. イソミミズは、豊富なエサを求めて砂浜の浅いところに進出した。
  2. しかし、砂の浅いところには外敵が多いので、自分を防御する方法が必要になった。
  3. そこで、イソミミズは発光する粘液を放出するという戦略を進化させた。
  4. 外敵がイソミミズを攻撃すると光る粘液が体に付き、このミミズが食べたくない相手であることを学習する。
  5. おかげでイソミミズは砂の浅いところでも生き伸びる可能性が増したが、浅い砂浜に適応したせいで海流に流される機会が多くなった。

すなわち、イソミミズが東南アジアから日本各地の砂浜に流れ着いたのは、発光する能力を進化させたからだと考えられます。生物の発光は、ホタルに見られるオスとメスのコミュニケーションやチョウチンアンコウに見られるエサの誘引など、いろいろな役割が知られてきましたが、今回のように、発光することで生息環境を変え、その結果として分布を広げることになったという例は初めての報告になります。また、イソミミズの発光メカニズムの詳細は現在もわかっていません。今後、発光しない近縁種のマレーナガイソミミズと成分組成を比較し、何が発光の有無を決めているのかを探ることで、イソミミズの発光の仕組みの解明につながると我々は考えています。

今回の研究は科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業(CREST)、「魚のバイオリフレクターで創るバイオ・光デバイス融合技術の開発」の一環で実施しました。詳しい成果は、4月16日付の英科学誌サイエンティック・リポーツ(電子版)に掲載されました。

【発表雑誌】
雑誌名:サイエンティフィック・リポーツ(Scientific Reports)、発行:Springer Nature
論文タイトル:Occurrence of bioluminescent and nonbioluminescent species in the littoral  earthworm genus Pontodrilus
著者:Teerapong Seesamut, Daichi Yano, Jose Paitio, Ikuhiko Kin, Somsak Panha, Yuichi Oba
ティーラポン・シーサムット(中部大学応用生物学部・CREST研究員)、矢野大地(中部大学応用生物学部・CREST研究員)、ジョゼ・パイティオ(中部大学応用生物学部・博士特別研究員)、金郁彦(中部大学応用生物学研究科)、ソムサック・パンハ(チュラロンコン大学・教授)、大場裕一(中部大学応用生物学部・教授、連絡著者)
DOI: 10.1038/s41598-021-87984-4

本学の問い合わせ先

研究に関すること
大場裕一 (中部大学 応用生物学部環境生物科学科 教授)
Eメール:yoba[at]isc.chubu.ac.jp ※アドレスの[at]は@に変更してください。
電話:0568-51-9332 (研究室直通)

報道に関すること
中部大学 学園広報部 広報課
Eメール:cuinfo[at]office.chubu.ac.jp ※アドレスの[at]は@に変更してください。
電話:0568-51-7638(直通)

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