エルトゥールル号シンポジウムに参加して(教授:中山 紀子)
【2015年12月25日】
今月12月に日本トルコ合作映画『海難1890』が全国的に公開された。この映画は、1890年のエルトゥールル号海難事件と1985年のテヘラン日本人救出劇の2つのエピソードを基にしている。この2つの出来事は日本の外務省のHPにも以下のように記載されている。
「日本・トルコ関係は、1890年のエルトゥールル号事件(1887年に小松宮彰仁親王同妃両殿下が欧州訪問の帰途にオスマン帝国を公式訪問したことに対する答礼として、アブデュル・ハミト2世が特使としてオスマン提督を日本に派遣した際、エルトゥールル号が帰路、紀州・串本沖で沈没。乗組員581名が死亡したが、日本側官民あげての手厚い救護により69名が救助され、日本の巡洋艦によりトルコに送還された事件)以降、歴史的に友好関係にある。
また、1985年3月、イラク・イラン戦争の中、テヘランで孤立した邦人を救出するためにトルコ政府がトルコ航空の特別機を派遣した出来事も、両国の友好関係の象徴的出来事となった」(http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/turkey/data.html#section6)
今年2015年は1890年に起こったエルトゥールル号事件から125年目にあたり、映画だけでなく、トルコ国内でさまざまな行事が行われたが、そのうちの一つであるトルコ海軍主催による「エルトゥールル号の事跡における海軍および外交国際シンポジウム」に私も招かれることになった。
「エルトゥールル号の悲劇後の皇室とトルコ」についてトルコ語で発表する私。
聴衆の多くは海軍士官学校の学生たちである
シンポジウムはエルトゥールル号が和歌山沖で沈没した9月16日とその翌日の2日間にわたって行われ、トルコ人19人(うち軍関係者が6人)日本人8人(東洋大学、京都外国語大学、高野山大学、大阪大学、京都大学、東京大学、トルコ協会、中部大学)の総勢27人がエルトゥールル号事件にまつわる研究を発表した。日本語かトルコ語の発表であったが、日本語の分かるトルコ人による同時通訳が配置された。
参加者の写真。海軍大将や在トルコ日大使などそうそうたる布陣である
日本から招かれた8人の研究者は、海軍にかなりの待遇を受けた。旅費はもちろん、シンポジウム期間中はイスタンブルの中心地にある軍の宿泊施設に滞在することができた。
宿泊した軍人用宿泊施設の部屋からの眺め。ボスフォラス海峡が眼下に見渡せる
シンポジウム1日目の夜は、ボスフォラス海峡沿いにある軍の飲食施設でカクテルパーティが開かれ、記念に銀のコインが贈呈された。最も印象深いのはシンポジウム終了後に実施された海軍の接待用軍艦によるボスフォラス海峡クルーズである。
ボスフォラス海峡クルーズが行われた軍艦Yakamoz
波の高い海峡を進むが、まったく揺れない。艦上で出されたワインや料理はともにハイレベルで大変美味であった。私たち発表者への厚遇は、エルトゥールル号事件に対するトルコ側の強い思いと、また同時に軍のパワーをも感じさせた。
日本とトルコの友好の証となったエルトゥールル号事件について関心のおありの方には、冒頭に紹介した映画『海難1890』(http://www.kainan1890.jp)の視聴をお勧めする。