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オックスフォード便り2(教授:中野 智章)

【2017年8月2日】

 

8月に入り、滞在も残すところあと1ヵ月ほどとなりました。いまは朝晩が10度前後、日中でも20度強といったところです。大学は夏期休暇で学部生が寮であるカレッジを去り(休暇中は家に帰り、また学期前に戻ってきます)、研究所にいるのは留学生や大学院生、教員、夏期休暇で資料調査にやってきた各国の研究者です。一方の街中は、観光客と語学学校などにやってくる若者であふれかえっています。目抜き通りはまっすぐ歩けないほどの混雑ぶりです。

   
前回の記事で触れた「試験後のTrashing」               市内中心部の様子

 私はと言えば、大事なことでのやり残しがないよう、研究所で調べものをするとともに博物館で資料調査をしています。研究所の図書館はエジプト学の分野で世界随一というだけあって、お目当ての本はほとんど揃っているので助かります。最近はインターネット上で多くの書籍や雑誌を見ることができるようになりましたが、まだここでしか読むことができないものもたくさんあります。


    アシュモレアン博物館のエジプト・ギャラリー

また、こうした環境では最新の書籍や雑誌を見ればどんな調査や研究がなされているかがわかる上、友人や大学院生からは話題の事柄を聞くこともできます。読み終えていない本にはPlease leaveといった一言と自分の名前を記した紙を挟めば机に残すことができるのですが、それを見れば誰が何に関心を持って研究を進めているかも一目で分かります。もっとも、私は流行のテーマをなるべく避けるようにしているのですが。

さらに図書館には著名な研究者の蔵書だった本も多く所蔵されています。そうした本をめくると、本の誤りの訂正や自身の考えと思われる書き込みを見つけることもでき、それが数十年を経てその本を読むこちらの研究のヒントになることもあります。

そしてヒントと言えば、今回はカレッジでも大きな刺激を受けています。メインの仕事場は研究所ですが、オックスフォードにはそれとは別にカレッジと呼ばれる学生や教員が所属する38の学寮が存在します。私がいるSt Edmund HallにはFellowと呼ばれる教員(多くは学部の教員を兼ねています)が約80名、Tutorと呼ばれるカレッジ付の家庭教師が約40名所属しています。

そうした教員用にカレッジにはSCR(Senior Common Room)と呼ばれる専用の部屋があり、昼食時には各研究所から人が集まってきます。そして昼食後はラウンジでコーヒーを片手に雑談をしたり、部屋に置いてある新聞や雑誌を読んで休憩できるようになっています。また、夕食はガウンを着てハイ・テーブルと呼ばれる場所で取ることもあるため、昔はずいぶん堅苦しい印象を受けていたのですが、実際に利用してみるとさまざまな分野の研究者との話が面白く、研究所とはまた違ったモノのみかたができるように感じているところです。


ハイテーブルでの夕食(お隣は四川大学の胡先生)

例えば、ギリシア出身の経済学者からは母国の状況を教えてもらい、乏しい知識ながら私も日本ではこうだと話を返します。そこに中世ドイツ文学の教授が割り込んできてヨーロッパの中でのギリシアの位置づけを語り、今度はイギリスの数学者が・・・というように話が進むのです。まさに私たち国際学科のハイブリッド・プロジェクト!先日にはパレスティナ出身の政治学者と話していたところ、そこにイギリスの物理学者が加わって大激論となり、間に挟まれていた私は抜けるに抜けられなくなってしまいました。

イギリスの大学はローンの導入をきっかけにこの10年で学費が3倍に上がり、これからの大学のあり方をめぐって議論が続いています。Brexitに関しても強硬姿勢を見せたメイ首相への支持が伸びず、二大政党のもう一方である労働党も実現不可能と思われる政策を打ち出しており、イギリス社会の行く末は非常に不透明です。外資系の銀行などは早くもドイツやオランダに拠点を移し始めています。そうした事柄に対しても、カレッジでは研究者が互いに議論をする風土があり、中には近所のレストランの体験や学生の出来を嘆くといった話題ももちろんあるのですが、とにかく食事時でも絶えず話を楽しんでいて、そうした中で得た着想やヒントといったものを今度は研究所に持ち帰り、研究を行う上で役立てます。つまりは、次の時代を創るという大学の役割の一つが、ここでは研究所に加えて38あるカレッジとともに機能し、世界中から人びとを惹きつける大きな原動力になっているように感じます。

あと2週間もすれば我が中部大学オックスフォード英語短期研修の一行がこちらにやってきますが、今年はこのカレッジで食事を何度か取ることになっており、実際の大学の雰囲気を味わってもらえたらと考えています。私もあと少し、この地での楽しくも真剣味に溢れた生活を終えて帰国の途につく予定です。

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