吉村研究室

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ユーグレナ

微細藻類ユーグレナのビタミン類生合成およびストレス耐性機構

 バイオ燃料生産は、現在とうもろこしやサトウキビなどから作られる第一世代のバイオエタノールおよびバイオディーゼルの伸びが著しい状況です。しかし、それらの原料は食糧と競合するため、新たな問題が生じています。したがって、第一世代バイオ燃料に依存しないためにも、非食用のバイオマスを利用するセルロース系エタノールなどの第二世代バイオ燃料の研究開発や、さらには次世代のエネルギー源として微細藻類によるバイオ燃料開発がより重要になってきています。
次世代のバイオ燃料化に適している微細藻類の条件は、単位時間当りのバイオマス生産量が多いこと、すなわち、ダブリングタイムが短く、細胞サイズが大きく細胞密度が高いこと、環境適応力が高いこと(強光、温度、酸・アルカリ、雑菌汚染等)、燃料化の際に内容物の脂質などの抽出が容易であること、付加価値の高いバイプロダクトを生成することがあげられます。真核微細藻類ユーグレナは、これらの要件を満たし得る数少ない微細藻類です。

 ユーグレナは非常に有用な性質を有しています。特に重要な点は、ユーグレナは動物や植物、両方の性質を有しており、独自の代謝経路なども存在することです。動物的な特徴として、高アミノ酸価、高栄養価、高ビタミン含有、高度不飽和脂肪酸含有など、植物的な特徴として、光合成における、高い光利用効率、そして、優れた活性酸素代謝能、高濃度炭酸ガス耐性能を有していることがあげられます。

 また、ユーグレナはワックスエステル発酵と呼ばれる非常にユニークな代謝経路を有しています。すなわち、ユーグレナが好気条件下においてパラミロンを蓄積し、嫌気条件下ではワックスエステル発酵によりパラミロンからワックスエステルを生産します。このワックスエステルは、ディーゼルエンジンの燃料やジェット燃料としての利用が期待できます。

 さらに、ユーグレナは通常の藻類や微生物が生育不可能な40%の高CO2濃度条件下でも培養可能な炭酸ガス耐性能を有しており、実際に、この特性を活かして火力発電所の排気ガスを用いた培養も試みられています。

 その他にも、ユーグレナはDNAを酸化的に損傷する要因となる電離放射線やUVに非常に高い耐性能を有しており、この特性をいかして極地や砂漠、宇宙などでの利用も期待されています。

 

 この様な、ユーグレナの有用な特性をさらに高めるためには、ユーグレナが有する独自の代謝経路やストレス耐性の分子機構を理解し、改変することが有効です。そこで当研究室では、様々なビタミン類の代謝やストレス応答制御に機能していることが明らかになってきている、Nudix hydrolaseに注目し、ユーグレナにおける本酵素ファミリーの生理機能解析を進めています。

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