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胸骨圧迫を楽に行うためのトレーニング方法とは?

【2015年12月23日】

1. はじめに

心肺停止の人を発見したときには、すぐ近くにいる人(バイスタンダー)による心肺蘇生(CPR) の実施が必要不可欠です。CPRは胸骨圧迫と人工呼吸の組み合わせですが、見ず知らずの他人に人工呼吸を行うことは、多くの人が抵抗を持っています。このため胸骨圧迫のみのCPR(ハンズオンリーCPR)があります1)。この方法も有効な心肺蘇生法であることが分かっています。一方、中断せずに胸骨圧迫を行い続けることから、ハンズオンリーCPRは疲労度が高いというデメリットがあります。そこで、私は如何なるトレーニングをしている人であれば、ハンズオンリーCPRを楽に行うことができるのかを検証しました。

 

2. 方法

胸骨圧迫は主に上半身を使います。そこで、上半身を鍛えている水泳選手とラグビー選手、そして特にトレーニングをしていない一般人を対象としました。全て大学生です。まず、彼らの体格、筋力、パワーなどの体力特性を評価しました。次に、ハンズオンリーCPRを10分間行わせ、その時の“きつさ”を心拍数と主観的な運動強度(楽だ、きついなど)から評価しました。ハンズオンリーCPR の時間を10分間にした理由は、日本では119番通報から現場に救急車が到着するまでに平均8分以上かかるため、10分間程度のバイスタンダーによるハンズオンリーCPRの実施が必要であると考えたためです。

 

3. 結果

実験により以下のような結果を得ました。

・上半身の重さや上半身の筋力については、ラグビー選手は、水泳選手や一般人よりも高かった。水泳選手と一般人の間には差がなかった。

・水泳選手とラグビー選手は一般人よりも上半身により発揮できるパワーが高かった。水泳選手とラグビー選手の間には差がなかった。

・水泳選手とラグビー選手は一般人よりもハンズオンリーCPR時の心拍数が低かった。これは上半身パワーの大きさと密接に関係していた。つまり、上半身パワーが高い人ほど、心拍数が低かった。水泳選手とラグビー選手の間には心拍数の差はなかった。

・ハンズオンリーCPR時の主観的な運動強度は、一般人よりも水泳選手の方が低かったが、ラグビー選手は一般人と差がなかった。水泳選手とラグビー選手の間には、主観的な運動強度の顕著な差はなかった。

 

4. まとめ

以上から、上半身のパワーを高くするトレーニングによりハンズオンリーCPRが楽に実施できるようになることが分かりました。また、上半身の重さや上半身の筋力が高いほど、身体の重さを利用したり、強く押し込むことができるため、胸骨圧迫には有利であると想像できますが、これらはラグビー選手よりも水泳選手の方が低かったにもかかわらず、ハンズオンリーCPR時の“きつさ”には差がありませんでした。このため、楽にハンズオンリーCPRを実施するために、上半身の重さや上半身の筋力は必ずしも必要ではないことも明らかになりました。水泳選手はラグビー選手のようにムキムキではないけれど、ハンズオンリーCPRを楽に行えていたため、水泳は無駄のない理想的なトレーニングと言えるかもしれません。

 

詳しくは、Ogata et al. (2015) の論文2) をご覧ください。

 

1.    http://aed.jaam.jp/cpr_process_02/cpr_process_02_01.html

2.    http://jphysiolanthropol.biomedcentral.com/articles/10.1186/s40101-015-0079-x

2.    http://jphysiolanthropol.biomedcentral.com/articles/10.1186/s40101-015-0079-x胸骨圧迫を楽に行うためのトレーニング方法とは?
 
1. はじめに
心肺停止の人を発見したときには、すぐ近くにいる人(バイスタンダー)による心肺蘇生 (CPR) の実施が必要不可欠です。CPRは胸骨圧迫と人工呼吸の組み合わせですが、見ず知らずの他人に人工呼吸を行うことは、多くの人が抵抗を持っています。このため胸骨圧迫のみのCPR(ハンズオンリーCPR)があります1)。この方法も有効な心肺蘇生法であることが分かっています。一方、中断せずに胸骨圧迫を行い続けることから、ハンズオンリーCPRは疲労度が高いというデメリットがあります。そこで、私は如何なるトレーニングをしている人であれば、ハンズオンリーCPRを楽に行うことができるのかを検証しました。
 
2. 方法
胸骨圧迫は主に上半身を使います。そこで、上半身を鍛えている水泳選手とラグビー選手、そして特にトレーニングをしていない一般人を対象としました。全て大学生です。まず、彼らの体格、筋力、パワーなどの体力特性を評価しました。次に、ハンズオンリーCPRを10分間行わせ、その時の“きつさ”を心拍数と主観的な運動強度(楽だ、きついなど)から評価しました。ハンズオンリーCPR の時間を10分間にした理由は、日本では119番通報から現場に救急車が到着するまでに平均8分以上かかるため、10分間程度のバイスタンダーによるハンズオンリーCPRの実施が必要であると考えたためです。
 
3. 結果
実験により以下のような結果を得ました。
・上半身の重さや上半身の筋力については、ラグビー選手は、水泳選手や一般人よりも高かった。水泳選手と一般人の間には差がなかった。
・水泳選手とラグビー選手は一般人よりも上半身により発揮できるパワーが高かった。水泳選手とラグビー選手の間には差がなかった。
・水泳選手とラグビー選手は一般人よりもハンズオンリーCPR時の心拍数が低かった。これは上半身パワーの大きさと密接に関係していた。つまり、上半身パワーが高い人ほど、心拍数が低かった。水泳選手とラグビー選手の間には心拍数の差はなかった。
・ハンズオンリーCPR時の主観的な運動強度は、一般人よりも水泳選手の方が低かったが、ラグビー選手は一般人と差がなかった。水泳選手とラグビー選手の間には、主観的な運動強度の顕著な差はなかった。
 
4. まとめ
以上から、上半身のパワーを高くするトレーニングによりハンズオンリーCPRが楽に実施できるようになることが分かりました。また、上半身の重さや上半身の筋力が高いほど、身体の重さを利用したり、強く押し込むことができるため、胸骨圧迫には有利であると想像できますが、これらはラグビー選手よりも水泳選手の方が低かったにもかかわらず、ハンズオンリーCPR時の“きつさ”には差がありませんでした。このため、楽にハンズオンリーCPRを実施するために、上半身の重さや上半身の筋力は必ずしも必要ではないことも明らかになりました。水泳選手はラグビー選手のようにムキムキではないけれど、ハンズオンリーCPRを楽に行えていたため、水泳は無駄のない理想的なトレーニングと言えるかもしれません。
 
詳しくは、Ogata et al. (2015) の論文2) をご覧ください。
 
1. http://aed.jaam.jp/cpr_process_02/cpr_process_02_01.html
2. http://jphysiolanthropol.biomedcentral.com/articles/10.1186/s40101-015-0079-x
 
胸骨圧迫を楽に行うためのトレーニング方法とは?
 
1. はじめに
心肺停止の人を発見したときには、すぐ近くにいる人(バイスタンダー)による心肺蘇生 (CPR) の実施が必要不可欠です。CPRは胸骨圧迫と人工呼吸の組み合わせですが、見ず知らずの他人に人工呼吸を行うことは、多くの人が抵抗を持っています。このため胸骨圧迫のみのCPR(ハンズオンリーCPR)があります1)。この方法も有効な心肺蘇生法であることが分かっています。一方、中断せずに胸骨圧迫を行い続けることから、ハンズオンリーCPRは疲労度が高いというデメリットがあります。そこで、私は如何なるトレーニングをしている人であれば、ハンズオンリーCPRを楽に行うことができるのかを検証しました。
 
2. 方法
胸骨圧迫は主に上半身を使います。そこで、上半身を鍛えている水泳選手とラグビー選手、そして特にトレーニングをしていない一般人を対象としました。全て大学生です。まず、彼らの体格、筋力、パワーなどの体力特性を評価しました。次に、ハンズオンリーCPRを10分間行わせ、その時の“きつさ”を心拍数と主観的な運動強度(楽だ、きついなど)から評価しました。ハンズオンリーCPR の時間を10分間にした理由は、日本では119番通報から現場に救急車が到着するまでに平均8分以上かかるため、10分間程度のバイスタンダーによるハンズオンリーCPRの実施が必要であると考えたためです。
 
3. 結果
実験により以下のような結果を得ました。
・上半身の重さや上半身の筋力については、ラグビー選手は、水泳選手や一般人よりも高かった。水泳選手と一般人の間には差がなかった。
・水泳選手とラグビー選手は一般人よりも上半身により発揮できるパワーが高かった。水泳選手とラグビー選手の間には差がなかった。
・水泳選手とラグビー選手は一般人よりもハンズオンリーCPR時の心拍数が低かった。これは上半身パワーの大きさと密接に関係していた。つまり、上半身パワーが高い人ほど、心拍数が低かった。水泳選手とラグビー選手の間には心拍数の差はなかった。
・ハンズオンリーCPR時の主観的な運動強度は、一般人よりも水泳選手の方が低かったが、ラグビー選手は一般人と差がなかった。水泳選手とラグビー選手の間には、主観的な運動強度の顕著な差はなかった。
 
4. まとめ
以上から、上半身のパワーを高くするトレーニングによりハンズオンリーCPRが楽に実施できるようになることが分かりました。また、上半身の重さや上半身の筋力が高いほど、身体の重さを利用したり、強く押し込むことができるため、胸骨圧迫には有利であると想像できますが、これらはラグビー選手よりも水泳選手の方が低かったにもかかわらず、ハンズオンリーCPR時の“きつさ”には差がありませんでした。このため、楽にハンズオンリーCPRを実施するために、上半身の重さや上半身の筋力は必ずしも必要ではないことも明らかになりました。水泳選手はラグビー選手のようにムキムキではないけれど、ハンズオンリーCPRを楽に行えていたため、水泳は無駄のない理想的なトレーニングと言えるかもしれません。
 
詳しくは、Ogata et al. (2015) の論文2) をご覧ください。
 
1. http://aed.jaam.jp/cpr_process_02/cpr_process_02_01.html
2. http://jphysiolanthropol.biomedcentral.com/articles/10.1186/s40101-015-0079-x

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