中部大学の研究活動

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テングザルは鼻が武器? ―大きくて強い雄は犬歯が小さい― (松田一希准教授ら)

【2020年9月21日】

プレスリリース

概要

テングザルの雄は、霊長類では類をみないほど大きく長い鼻持っている。中部大学創発学術院の松田一希准教授別サイトにリンクしますと京都大学霊長類研究所の香田啓貴特定研究員を中心とする研究チームは、テングザルのこの鼻の進化のなぞ解きに挑戦している。一般の霊長類における闘争の際の重要な武器は「犬歯」である。しかし、一見すると無力なテングザルの大きな鼻は、犬歯よりも雄同士の熾烈な戦いを勝ち抜く強力な武器になっているかもしれない。研究チームは、体格が大きく、鼻の大きな強い雄ほど犬歯が小さいことを発見した。

これまでに研究チームは、テングザルの雄の鼻の大きさは声の音域と関係し、また鼻の大きさが雄の肉体的な強さと高い繁殖能力を保証することを明らかにしてきた。雄の鼻は、雌を魅了するための大きな武器となっていることも明らかとなっている。大きな鼻という雄の強さを示す「勲章」のおかげで、雄同士は互いの強さを推し量り、雌をめぐる無駄な争いを避けていることが示唆されている(Koda et al. 2018, Science Advances)。

一般的にヒトを除く霊長類は、「鼻」ではなく「犬歯」を重要な武器にしている。鋭い犬歯にかまれた切り傷は致命傷になることもある。雄間では犬歯が大きいほど強い個体であり、闘争に打ち勝ち、雌を獲得するために有利だと言える。研究チームは、テングザルの鼻の進化的意義の更なる解明を目指し、本種の犬歯に着目した。テングザルはハーレム型の群れを形成して暮らしている。群れが複数集まり、さらに大きな集団「バンド」を形成する重層社会という特殊な社会を形成している。複数のハーレムは縄張りを持たず、泊り木では複数のハーレムが近接して眠っている。このことから、当初はテングザルのハーレムの雄同士は、より多くの雌を獲得する/奪われるような激しい競争に常にさらされているため、より強い雄ほど大きな犬歯を発達させていると予想した。

ところがこの予想は大きく裏切られた。テングザルは一般的な霊長類と違い、強い雄(体格が大きい)ほど小さな犬歯を持っていた。テングザルの雄同士は、大きな体格を生かしたダイナミックな枝揺すり、さらに強い雄の勲章である大きな鼻を使った鳴き声を出すことで間接的に競争相手と戦い、犬歯による激しい闘争の末の致命傷を回避していることがわかってきた。これは直接的に体を接触させるような闘争が極めて少ない野生のテングザルの観察とも一致している。

また、あまりに大きな犬歯は食べ物の咀嚼(そしゃく)に不利になる。犬歯を発達させることは、エネルギー的にも大きなコストのかかる進化だと考えられる。葉っぱというエネルギー効率の悪い食物を主食とするテングザルは、ある程度の大きさで犬歯の発達を止め、効率良く食物を摂取することでより体格を大きくする方向にエネルギーを投資する方が、雄間競合に打ち勝つ上では有利な戦略だったのかもしれない。性を巡る競争(性選択)と生きる上での競争(自然選択)の相互作用により、形質のトレードオフ(一得一失)が進化した興味深い現象だと言える。

今回の研究成果は9月21日付の英科学誌コミュニケーションズ・バイオロジーに掲載された。

ボルネオ島の固有種であるテングザルは、絶滅危惧種に指定されている。
雄の体重は約20キロ、雌はその半分くらいの重さしかない。ハーレム型の群れを形成する。

本学の問い合わせ先

研究に関すること
松田一希 (中部大学創発学術院准教授)
E-mail:ikki-matsuda[at]isc.chubu.ac.jp ※アドレスの[at]は@に変更してください。
電話:0568-51-9520 (中部大学創発学術院直通)

報道に関すること
中部大学 学園広報部広報課
E-mail:cuinfo[at]office.chubu.ac.jp ※アドレスの[at]は@に変更してください。
電話:0568-51-7638(直通)

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