中部大学の研究活動

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細胞を傷つけず熟練技術不要なゲノム編集実験で染色体の遺伝子操作に成功 ─マウスで高い効果を確認─ (岩田悟助教、岩本隆司教授ら)

【2019年10月11日】

プレスリリース

研究成果のポイント

  • 電気穿孔法を使い世界で初めて染色体改変に成功
  • マウス生体内の受精卵の染色体を改変
  • 染色体疾患モデル動物の作製で創薬への貢献に期待

発表内容

中部大学 実験動物教育研究センターの岩田悟助教別サイトにリンクしますと生命健康科学部 生命医科学科の岩本隆司教授別サイトにリンクします(実験動物教育研究センター長)は、愛知県医療療育総合センター 発達障害研究所の福士大輔主任研究員らと共同で、細胞へのダメージが極めて低い染色体逆位のゲノム編集実験に成功した。遺伝子の配列を変えるゲノム編集用の試薬を、従来の針で細胞内に注射する顕微注入 (マイクロインジェクション) 法に代え、電気穿孔 (エレクトロポレーション) 法で導入した(図)。その結果、長い遺伝子操作で不利と思われていたエレクトロポレーション法で特定の染色体が改変されたマウスを作り出すことに世界で初めて成功した。

2012年にゲノム編集技術のCRISPR/Cas9(*1)が登場して以来、新薬の効果確認などに利用する遺伝子改変マウスの作製が以前と比べて容易になった。しかし染色体逆位(*2)のような大規模なゲノムの改変は、年単位のトレーニングと高価な設備が必要で、熟練者でもゲノム編集用の試薬を導入するのに3時間程度かかるマイクロインジェクション法を用いた報告例しかない。そこで研究チームは、トレーニングは1~2か月で済み、装置も比較的安価で、作業が15分程の短時間で済むエレクトロポレーション法 (TAKE法*3) で染色体逆位マウスの作製を試みた。エレクトロポレーション法は細胞に電気パルスを与え、一時的にできる隙間を通して受精卵内にゲノム編集試薬を導入できる。細胞の隙間は自然に閉じるためダメージが少なく、受精卵の生存率を高められると期待した。

体外受精で作製したマウス受精卵にエレクトロポレーションを行なった結果、塩基対が反転する逆位の領域が従来の報告の1.5倍と長い約7.67Mb(メガメース:1Mbは100万塩基対)が出産したマウスで確認された。染色体疾患のモデルマウスを作製するには長い染色体改変が必要であり、改変領域が長いほど、より多くの種類の疾患モデルを作成できる。さらに採卵と移植が不要なマウス生体内にある自然受精卵に対し、卵管ごとゲノム編集するエレクトロポレーション法のi-GONAD法(*4)を適用したところ、約4.54Mbと従来と同程度の逆位領域を有するマウスを出産した。これらの結果からエレクトロポレーション法はマウス受精卵における染色体レベルの長い遺伝子領域の改変技術としても有効であることが示された。

エレクトロポレーション法は以上の観点から、研究予算が限られる小規模や研究室や学部で研究する学生でも試みることが可能なので、今後はこの簡便な方法で染色体改変の研究が世界的に進むと考えられ、ヒトの染色体疾患の発症メカニズムの解明や、診断・治療法開発を加速させると期待している。

今回の成果は日本時間10月11日(金曜日)、18時に英科学誌Scientific Reports(電子版)に掲載された。
Iwata et al.,” Simple and large-scale chromosomal engineering of mouse zygotes via in vitro and in vivo electroporation”, Scientific Reports.
https://www.nature.com/articles/s41598-019-50900-y

用語解説

*1 ゲノム編集技術CRISPR/Cas9

任意のゲノム配列を削除、置換、挿入することができる技術。CRISPR/Cas9は、標的配列を決めるguide RNA(gRNA)とDNA切断酵素のCas9 nucleaseだけで標的のDNA配列を切断、破壊ができる。作製が簡便でありコストもかからなくなったことで、瞬く間に世界中に拡大した。

*2 染色体逆位

染色体が部分的に逆転している染色体異常。癌や血友病、男性不妊につながる可能性のある染色体疾患である。

*3 TAKE法

echnique for Animal Knockout system by Electroporation法の略。3ステップの電気穿孔を設定し、1ステップ目の電気パルスで細胞に穴を空け、2および3ステップ目の電気パルスでゲノム編集試薬を導入する方法。効率的なゲノム編集試薬の導入が可能。
KANEKO, Takehito, et al. Simple knockout by electroporation of engineered endonucleases into intact rat embryos. Scientific reports, 2014, 4: 6382.

*4 i-GONAD法

improved Genome-editing via Oviductal Nucleic Acids Delivery法の略。受精卵を有する妊娠マウスの体内にゲノム編集試薬を注入し、エレクトロポレーションを行う手法。採卵・移植のステップが不要で生体のままゲノム編集が可能。
OHTSUKA, Masato, et al. i-GONAD: a robust method for in situ germline genome engineering using CRISPR nucleases. Genome biology, 2018, 19.1: 25.

問い合わせ先

岩田悟 (中部大学 実験動物教育研究センター 助教)
電子メール:satoru_iwata[at]isc.chubu.ac.jp ※アドレスの[at]は@に変更してください。
電話:0568-51-9803(直通)

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