中部大学の研究活動

  • ページの本文のみをプリントします。ブラウザの設定で「背景色とイメージを印刷する」設定にしてください。
  • ページ全体をプリントします。ブラウザの設定で「背景色とイメージを印刷する」設定にしてください。

自動車やビルの窓を10分の1に軽くできる新しい薄膜材料開発 ─透明で紫外線をカットし硬さがガラスの3倍、プラスチック表面に成膜可能─ (多賀康訓特任教授ら)

【2019年9月10日】

プレスリリース

研究成果のポイント

  • 硬さがガラスの3倍の薄膜と成膜技術を開発
  • 可視光を80%以上透過し紫外光を80%以上遮蔽する多機能膜で自動車仕様をクリア
  • ガラスをプラスチックに置き換え、自動車やビルに使う窓の重さ10分の1を目指す

発表内容

本学の多賀康訓特任教授(総合工学研究所、薄膜研究センター長)別サイトにリンクしますらは、自動車やビルの窓を10分の1近くまで軽くできる新しい薄膜材料を開発した。素材はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂を含む酸化セリウム(セリア、CeO2)で、スパッタリング法によりガラス基板に成膜したところ、表面の硬さが約3倍に向上した。また実験の初期段階だが、プラスチックフィルムへの成膜によって表面の硬さがほぼ10倍に向上するデータも得た。プラスチック表面の硬さを成膜したガラスと同等まで高められれば、ガラスの数十倍高い衝撃吸収性を生かし、風によるたわみの影響を考慮しても窓の厚さを約5分の1にできる。プラスチックの比重はガラスの約2分の1であることから、これらの条件を掛け合わせると窓は10分の1近くまで軽くなり、大幅な省エネルギーにつながると期待している。

現在、自動車の窓にはほとんど無機ガラスが使われている。一般的な自動車の場合、窓の重さは車体の約5%を占める。この窓の重さを約10分の1にできれば、自動車の電動化に伴う車両の軽量化により大きく寄与する。トヨタグループの研究開発会社、豊田中央研究所(愛知県長久手市)で機能薄膜研究室長や理事、顧問を務めた多賀特任教授は、自動車用窓の軽量化を目指してガラスを代替するプラスチックの表面特性を向上させる研究などに取り組んできた。

ガラス表面の硬さを高めるため、表面に硬いCeO2を成膜する研究がおこなわれている。しかしCeO2は硬いが脆いため、変形によってクラックが多数発生する問題がある。今回、多賀特任教授はフッ素樹脂のPTFEを5~15体積%混合したCeO2の薄膜素材と成膜技術を開発した。PTFEを混合することで紫外光を80%以上遮蔽しガラスの3倍の方さを維持したまま柔軟性があり曲げによるクラック発生を大幅に改善出来ると考えた。

実験ではガラスの表面にアルゴンイオンを用いるスパッタリング法で膜厚100~200ナノ(ナノは10億分の1)メートルのCeO2-PTFE膜を成膜したところ、ナノインデンテーション法(またはナノインデンター)と呼ぶ手法で測定した表面硬さは約6000N/mm2から約17000N/mm2に向上した。成膜後も水をはじく性質(撥水性)は高く、指標である水滴の接触角は90度以上だった。また可視光の透過率は80%以上で、逆に有害な紫外光の遮蔽率は80%以上と高く、ともに自動車の窓に求められる仕様を上回った。

ガラスに続きプラスチックシートに成膜する実験も開始した。材料にはエンジニアリングプラスチックのポリカーボネート(PC)や汎用樹脂のポリエチレンテレフタレート(PET)を用いた。それぞれに成膜したところ、PCの硬さは約180N/mm2から約1600N/mm2に、PETでは約300N/mm2から約1300N/mm2に向上した。CeO2-PTFE膜を成膜したPC樹脂は自動車用耐候試験条件による劣化が全くないことも確認した。まだ硬さはガラスを用いた時ほど高くないが、プラスチック基板に表面硬化フィルム等を用いることにより無機ガラスと同等の表面硬さが達成できるとみている(図)。CeO2-PTFE膜の成膜温度は約100℃以下で、プレスチックの耐熱温度より低いため、母材の特性が落ちる心配はないという。

開発した高い可視光の透過率と紫外光遮蔽率を併せ持つCeO2-PTFE膜は自動車だけでなくビルの窓にも適用できる。多賀特任教授の研究テーマは、このほど科学技術振興機構(JST)の「研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)」に採択された。2019年10月から2023年3月にかけ、実用化に向けた研究を行う。プラスチックや建材、自動車メーカーと組み、軽量で安価な窓材の量産に向けた技術を開発する。低価格化に向け効率的に製造するため、プラスチックシートの表面に連続的に成膜できるロール・ツー・ロール方式の採用を検討する。

問い合わせ先

多賀康訓特任教授(総合工学研究所、薄膜研究センター長)
電子メール:y-taga[at]isc.chubu.ac.jp ※アドレスの[at]は@に変更してください。
電話:0568-51-9819(直通)

中部大学の研究活動ニュース一覧

ページの先頭へ