中部大学の研究活動

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マリーゴールドの根が出す物質の殺虫メカニズムを解明 ─無農薬で作物の収穫量を増やす持続的食糧生産の実現を目指す─ (長谷川浩一准教授、応用生物学専攻博士後期課程2年浜口昂大さんら)

【2019年5月20日】

プレスリリース

研究成果のポイント

  • マリーゴールドの土壌中農作物病害線虫抑制メカニズムを解明
  • マリーゴールドの分泌物が、病害線虫の表皮から浸透して効果的に殺虫することを、細胞および遺伝子レベルで突き止めた
  • 残留農薬の危険性や環境負荷を減らし、持続的な食料増産を目指した総合的病害管理(IPM)の普及に貢献

発表概要

中部大学 応用生物学部 環境生物科学科の長谷川浩一准教授別サイトにリンクしますと中部大学大学院 応用生物学研究科 応用生物学専攻 博士後期課程2年浜口昂大(たかひろ)さんらは、観賞用草花として人気のあるマリーゴールド(写真1)に殺虫作用があることを、線虫(*1)を用いた遺伝子研究で明らかにした。マリーゴールドの根から分泌される物質に線虫が触れると、線虫の表面に解毒作用のある酵素が発生することがわかった。

土壌中の病害虫は農作物に寄生して枯らす。様々な病害虫の中でも線虫の被害が特に多く、そして難防除害虫として世界中で問題になっている。被害額は世界で年間1000億ドルにのぼるという調査報告もある。マリーゴールドに線虫抑制作用があることが古くから知られており、対抗植物(*2)として農作物の端境期に植えたり輪作に利用されたりしてきた。マリーゴールドの根から分泌される化学物質αターチエニルの酸化作用が主な効果であると予想されてはいたが、それを証明する研究報告はこれまでなかった。

今回、中部大学の長谷川研究室は理化学研究所、ポルトガル・エボラ大学との共同で、マリーゴールドの根から分泌されるαターチエニルがいかに効率よく殺線虫作用を発揮するかを、細胞・遺伝子レベルで突き止めた。αターチエニルは酸化ストレス性の殺線虫作用を示すことを、実験生物の線虫カエノラブディティス・エレガンス(略称エレガンス)で確認した。具体的にはゲノム編集技術等を駆使し、酸化ストレスを受けた時に解毒酵素のグルタチオン S-トランスフェラーゼ(GST)などができると、同時に緑色蛍光タンパク質(GFP)蛍光を発する線虫を作製した。この線虫にαターチエニルを与えたところ、表皮で解毒反応を示しながら死んでゆくことが分かった(写真2)。

2050年には100億人を突破するという予測もある世界人口の加速的増加を支えるため、環境への負荷をなくして持続的にかつ効率よい食糧増産を目指す必要がある。農作物の生産性を阻む大きな問題の一つに、様々な病害虫による被害がある。多くの場合、線虫害抑制のために農薬が使用されるが、環境への負荷や、残留農薬の問題が生じる。そのため農薬の使用量を極力減らし、様々な病害虫対抗手法を組み合わせた総合的病害管理(Integrated Pest Management:IPM)がこれからの農業に重要と言える。さらに研究を進めることにより、農薬の使用量を減らしつつ、農作物の収穫量を増やす農作技術の実現を目指す。

今回の研究成果は英国の生物学専門誌Biology Open(電子版)に掲載された。
T. Hamaguchi et. al., “Nematicidal actions of the marigold exudate α-terthienyl: oxidative stress-inducing compound penetrates nematode hypodermis.”, Biology Open 8 (4).
http://bio.biologists.org/content/8/4/bio038646

写真1 マリーゴールド

写真2 線虫が解毒酵素を発生させる様子。左段は蛍光顕微鏡、右段は明視野顕微鏡画像
遺伝子組み換え体線虫を作成し、この解毒酵素GSTの働きを緑色蛍光タンパク質GFPで標識して視覚で確認できるようにした。A、Bは毒物を与えていない時で蛍光を発しない。C、Dは毒性の合成化合物アクリルアミドを投与した時。全身で蛍光を発しており、毒物が体内まで浸透したことがわかる。E、Fはマリーゴールドの根から分泌されると同じαターチエニルを投与した時。表皮で蛍光を発しながら死んだ。αターチエニルは経口的に体内へ取り込まれる必要がなく、表皮から効果的に浸透して殺虫することが示された。

用語解説

*1 線虫

無脊椎動物である線形動物門の総称。体はクチクラ(堅い膜)に覆われ、糸状やひも状で、体長1ミリメートルから数メートルに及ぶ。回虫・蟯虫(ぎょうちゅう)・糸状虫・根腐れ線虫・根瘤(ねこぶ)線虫など、植物や動物に有害な寄生性・病原性が多く知られているが、寄生性もなく土壌や水中で自由に動き回る自由生活性のものもいる。自由生活性線虫のカエノラブディティス・エレガンス(Caenorhabditis elegans、略称エレガンス)は、培養や観察、遺伝子組み換え実験が簡単であるため、様々な生物分野で実験生物として利用されている。

*2 対抗植物

含有する物質や組織内で作り出す活性成分が直接または間接的に農作物病害虫に作用し、寄生や艀化、成長、増殖を抑制したり致死させたりし、その処理、栽植が農作物病害虫密度の低減に効果を示す植物。マリーゴールド、ナンキンマメ、イチゴ、キマメ、エピスグサ、ムラサキチョウマメモドキ、多年性ダイズ、シラトロ、ギニアグラス、クズインゲンなどがある。

問い合わせ先

長谷川浩一 (中部大学 応用生物学部環境生物科学科 准教授)
電子メール:koichihasegawa[at]isc.chubu.ac.jp ※アドレスの[at]は@に変更してください。
電話:0568-51-9864(直通)

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