中部大学の研究活動

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中部大学、次世代燃料電池用新規空気極材料を開発 ―SOFCの稼働温度を200℃低減へ― (橋本真一教授ら)

【2019年4月22日】

プレスリリース

研究成果のポイント

  • 従来の電極材と比べ、10倍の酸素との反応性を示す新しい空気極材料を開発
  • これまでの高性能空気極とは異なる反応機構で、コンポジット構造を有する
  • 燃料電池の稼働温度を750℃から500℃台に低温作動化
  • コストダウンに貢献するとともに、航空機や自動車などの移動体への応用も可能

発表内容

中部大学工学部の橋本真一教授別サイトにリンクしますは、波岡知昭准教授別サイトにリンクします伊藤響教授別サイトにリンクしますらと共同で、固体酸化物形燃料電池(*1)(SOFC)の電極に用いる新しい空気極材料を開発した。現在、家庭用燃料電池システム「エネファーム」として普及が進むSOFCは、750℃近傍で稼働している。それに対し、今回開発した空気極材を用いると500℃台まで稼働温度を下げることができるため、安価だが、高温腐食しやすいフェライト系ステンレスの使用が可能になり、大幅なコストダウンに貢献できる。また、低温作動化に伴い始動性も高くなるため、移動体にも使用が可能で、航空機用補助電源(APU) *2やEVにおけるレンジエクステンダー(*3)への応用も視野に入れている。

従来、SOFCの空気極は、酸素イオンと電子の両方が動く、酸素イオン-電子混合導電体が、電極表面全てが反応場になるため、高性能空気極としての要件とされていた(図1(a))。しかし、今回開発した空気極は、空気雰囲気中で酸素イオンが殆ど導電しないランタン・ニッケル酸化物(LaNiO3、図1(b))に、酸素イオン導電体であるガドリニウム添加酸化セリウム酸化物(GDC)を、コンポジット化(複合化、図1(c))することで、高性能化を実現した。酸素をイオン化し取り込む主な反応場は、GDCとLaNiO3と気相の三相界面になるため、高性能化には不利のように見えるが、電極反応活性が極めて高く、従来材料のランタン・ストロンチウム・コバルト・鉄酸化物(LSCF)と比較して、550℃で10倍以上、500℃では18倍以上の電極性能(界面導電率*4)を示した(図2)。今後、作製条件の最適化により、500℃台でも、LSCFの750℃での電極性能と同等以上に、高められるとみている。

本開発は、橋本教授が参画していた、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業(CREST) エネルギー高効率利用のための相界面科学「実環境計測に基づく高温電極の界面領域エンジニアリング」(研究統括 花村克悟/笠木伸英、 研究代表者 川田達也)で見出された電極反応機構の知見に基づき、中部大学単独の研究で実現した。今後、他の研究機関や企業と協力し、開発した新しい空気極材料と固体電解質、燃料極を組み合わせて500℃台で稼働する移動体用SOFCの開発を目指す。

図1 新規空気極の反応機構と電極構造


(a) 酸素イオン-電子混合導電体を用いた空気極の反応機構: 電極表面全体が電極反応に寄与するため高性能化が望めるとされてきた。
(b) 新規空気極の反応機構: 電子導電体であるLaNiO3は空気雰囲気で酸素イオンを殆ど導電しないため、酸素をイオン化し取り込む主たる反応場は、LaNiO3とGDCと気相の三相界面になる。しかし、電極反応活性は極めて高いため、高性能化を実現した。
(c) 新規空気極の電極構造: 三相界面を増やすため、LaNiO3とGDCの多孔質なコンポジット構造(複合構造)を有するが、粒子の粒径は従来電極と同等のサブミクロンオーダーの大きさになる。

図2 空気極の性能比較

用語解説

*1 燃料電池

酸素と、水素などの燃料との電気化学反応を利用した発電装置。複数の種類があり、代表的なものは、電解質に高分子材料を使う固体高分子型燃料電池(PEFC)とセラミックスを使う固体酸化物型燃料電池(SOFC)の2種類。いずれも「エネファーム」として、製品化され家庭用に使われている。発電の際に発生する熱は給湯に利用されており、エネルギーの利用効率は高い。稼働温度はPEFCが約80℃に対してSOFCは約750℃と高いが、効率はSOFCが上回る。自動車用ではPEFCの開発が先行している。

*2 航空機用補助電源(APU)

航空機の場合、推進用ジェットエンジンを始動する圧縮空気と、電力の供給のため、補助電源(または補助動力装置、APU)と呼ばれる小型のガスタービン発電機が搭載されている。圧縮空気はガスタービンの抽気が使用されるが、配管が複雑となるため、ボーイング787では、電力のみを供給するAPUとし、電動でジェットエンジンを始動することで、燃費改善を図っている。今後、省エネルギーの観点で、さらなる航空機の電動化が推進されるとみられている。

*3 レンジエクステンダー

バッテリーとモーターだけで動くEVは、電池容量の制限から、ガソリン車より走行距離が短い問題がある。EVの航続距離延長を目的として、各種燃料を用いて小型発電装置で発電し、バッテリーに給電するシステムをレンジエクステンダーと呼ぶ。発電装置が走行中の路面の負荷変動の影響を直接受けないため、高効率作動が可能となる。現在、エンジンを動力源とした発電装置など、様々な方式が検討されているが、日産自動車は、燃料にバイオエタノールを用い、SOFCを発電装置としたレンジエクステンダー付EVのデモ走行に成功している。

*4 界面導電率

燃料電池の電極性能を示す指標。単位面積あたりのコンダクタンス(電流の流れやすさ)で記される。SOFCの空気極の場合、電極反応により、気相中の酸素をイオン化して電解質へ取り込む容易さを示している。よりスムーズな電極反応は、発電時の電池の抵抗成分を低減し、発電効率を改善することになる。

問い合わせ先

橋本真一 (中部大学 工学部 創造理工学実験教育科 教授)
電子メール:s-hashimoto[at]isc.chubu.ac.jp ※アドレスの[at]は@に変更してください。
電話:0568-51-6406(直通)

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