中部大学の研究活動

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ゴリラの生存能力、動物園飼育より野生が勝ることを発見 ─野生型腸内菌移植で絶滅危惧動物の野生への復帰に期待─ (土田さやか創発学術院特定講師、牛田一成教授ら)

【2018年9月10日】

プレスリリース

研究成果のポイント

  • 野生と動物園で飼育するゴリラに共生する腸内乳酸菌の遺伝情報や生化学性状を比較
  • 病原性大腸菌に対する抗菌能力は野生ゴリラの腸内乳酸菌が高いこと発見
  • 飼育ゴリラへの野生ゴリラの腸内乳酸菌移植で薬に頼らない生存能力向上に期待

発表概要

 中部大学創発学術院の土田さやか特定講師と牛田一成教授別サイトにリンクしますはウガンダ共和国マケレレ大学獣医学部やガボン共和国熱帯生態研究所と共同で、野生と動物園で飼育するゴリラ(*a)それぞれに共通して腸内に共生する細菌(腸内細菌)(*b)の一種である乳酸菌の遺伝子と生理性状を解析し、ゴリラの種類によって腸内乳酸菌の系統が分かれること(図1)、野生の方が飼育したゴリラの腸内乳酸菌より病原性大腸菌への抗菌活性物質を作る能力が高いことを発見した(図2)。動物園で飼育するゴリラが体調を崩せば、一般には抗菌薬を使って治療する。長年の飼育によって本来備えていた腸内菌の能力が退化していることがわかった。
 研究に用いたのは世界の動物園のほとんどで飼育されているニシローランドゴリラ(写真1)、アフリカ大地溝帯の西側に生息する野生のニシローランドゴリラ(写真2)、東側に生息するマウンテンゴリラ(写真3)の3種類。研究チームはこれまで、動物園のニシローランドゴリラと野生のニシローランドゴリラの腸内細菌を分析し、2014年にゴリラに特異的な腸内共生乳酸菌「Lactobacillus gorillae (ラクトバラシス ゴリラエ)」(以下、乳酸菌)を発見した。今回、野生のマウンテンゴリラの腸内にも同種の乳酸菌が共生することを発見した。
 まず3種類のゴリラの腸内に共通して共生する乳酸菌の遺伝子を解析したところ、ニシローランドゴリラ(野生と飼育)とマウンテンゴリラの乳酸菌は、分類に用いる遺伝子の塩基配列ブロックが0.5%あまり異なり、別々の分類群に配置されることが分かった(図1)。続いて病原性大腸菌に対する抗菌物質を作る能力を比べたところ、野生のマウンテンゴリラ、野生のニシローランドゴリラ、動物園のニシローランドゴリラの順に高いことがわかった(図2)。同じニシローランドゴリラでも、野生の乳酸菌の方が病原性大腸菌に対する抗菌力が高い。長年の飼育によって抗菌性が低下したとみている。
 研究チームは、今後、動物園のニシローランドゴリラの餌に野生のマウンテンゴリラ由来の乳酸菌を混ぜて腸内で増やし、抵抗力が高まるかどうかを確認する必要があると考えている。今回はゴリラの研究を報告したが、土田特定講師と牛田教授は絶滅が危惧される他種の動物、とくにライチョウでも同様の研究を行っており、感染症を抗菌剤で予防するより、もともと備わっていた腸内菌の能力を復活させれば、野生に帰しやすくなると期待している。今回の成果はスイスのオープンアクセス学術雑誌出版社MDPIが発行する微生物学専門誌「マイクロオーガニズムス」に掲載された。
 

写真1 飼育されているニシローランドゴリラ(東山動物園で撮影)

 

写真2 野生のニシローランドゴリラ(ガボン共和国で撮影)

写真3 野生のマウンテンゴリラ(ウガンダ共和国で撮影)

図1 ゴリラの進化系統樹とゴリラ特異的乳酸菌の系統樹
ヒガシゴリラ(ウガンダ共和国の野生マウンテンゴリラ)から分離されたラクトバシラスゴリラエ(青色網掛け5株)とニシローランドゴリラ由来のラクトバシラスゴリラエ(オレンジ網掛け13株)の系統樹上の配置が2つのグループに分離。ニシローランドゴリラ由来の13株の内8株は動物園のゴリラから、5株はガボン共和国の野生個体から分離

図2 ゴリラ乳酸菌の抗菌活性
横軸は野生マウンテンゴリラ(MW)、野生ニシローランドゴリラ(WW)、飼育ニシローランドゴリラ(WC)。縦軸は、乳酸菌の分泌する抗菌物質によって生じる病原性大腸菌の増殖阻止円の直径。数値が大きいほど、病原性大腸菌の増殖を阻止する力が強い

論文

S.Tsuchida et.al.,"Characteristics of Gorilla-Specific Lactobacillus Isolated from Captive and Wild Gorillas",Microorganisms 2018, 6(3), 86
http://www.mdpi.com/2076-2607/6/3/86

用語解説

*a ゴリラの進化と種類

約175万年前は1種類だったが、アフリカにできた大地溝帯で東西に分離され、西側に生息するニシゴリラ、被害側のヒガシゴリラに分かれて進化したと考えられている。ニシゴリラにはニシローランドゴリラとクロスリバーゴリラ、ヒガシゴリラにはヒガシローランドゴリラとマウンテンゴリラが住む。世界中の動物園のほとんどで飼われるゴリラはニシローランドゴリラ

*b 腸内細菌

人や動物の腸内に棲息する細菌。抗菌物質を作るなど体に役立つ善玉菌と病原性を持つ悪玉菌がある。病気を薬で治すうち、もともと備わっていた善玉菌は減る傾向にあり、残った菌も抗菌力を失うなどの現象が見られる

問い合わせ先

土田さやか (中部大学創発学術院特定講師)
電子メール s_tsuchida[at]isc.chubu.ac.jp ※アドレスの[at]は@に変更してください。

牛田一成 (中部大学創発学術院教授)
電子メール k_ushida[at]isc.chubu.ac.jp ※アドレスの[at]は@に変更してください。

電話:0568-51-9520 (創発学術院直通)

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