中部大学の研究活動

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数学で脳の連想記憶機構の一端が明らかに ─日本人による30年以上前の数理モデルを証明─ (津田一郎教授)

【2018年3月27日】

プレスリリース

研究成果のポイント

  • 人の連想機構を説明する数理モデルを数学で証明
  • 数理モデルは津田一郎・現中部大学教授が1987年(31年前)に提案
  • 今回、数理モデルを海外の科学者が数学で証明

発表内容

 中部大学創発学術院の津田一郎教授別サイトにリンクしますは、新技術開発事業団(現科学技術振興機構)プロジェクトのグループリーダーだった1987年、人が脳で連想記憶(*1)を行う機構の一端を説明する数理モデルを提案(参考文献a)。このたびブラジル・リオデジャネイロ連邦大学の数学者らが、このモデルを数学で証明することに成功した(参考文献b)。数理モデルはコンピューターを用いる数値シミュレーションで検証したが、当時の数学的手法では証明できなかった。今回初めて数学によってモデルが正確であることが明らかになった。
 脳は目、耳、鼻、舌、皮膚から受ける刺激を情報として記憶する。その際、過去の記憶を参考にして新たな入力情報が何であるかを連想する。例えば、かじったリンゴを見てもリンゴだと連想し、レモンを見ると酸っぱいと連想して新たな記憶として留める。
 31年前、津田教授は大脳新皮質(*2)内のニューロン(神経細胞)(*3)のネットワーク構造を模擬した神経回路モデルで連想記憶の研究に着手。神経回路には記憶に達する途中の状態(疑似アトラクター)が一時的に留まり、複数のニューロン間をカオス(無秩序)的な状態で行き来しながら最終的に秩序のある記憶になる数理モデルを提案した。モデルを使って数値シミュレーションも実施した。しかしシミュレーションは無限小数を有限にし、四捨五入することなどで誤差が生じる。そのため当時、モデルが確実に正しいとは断言できなかった。今回、誤差内に真の解があることを保証する数学的手法で数理モデルが正しいことが証明された。
 津田教授は連想記憶の数理モデルを提案する5年前の1982年、京都大学理学研究科博士課程3年の時、カオス的な状態にノイズを加えると秩序を持った状態に変化することを数値シミュレーションで示した。同年4月、博士研究員となり京大博士課程1年の松本健司(現北海道大学准教授)と協力して条件を変えて実験を進め、1983年に数理モデルを導いた(参考文献c)。ノイズによるカオスから秩序状態への変化は、連想記憶の数理モデルに結び付いた。秩序化の数理モデルの正しさは、2017年にイタリア・ピサ大学の数学者らによって数学で証明された(参考文献d)。数学で証明された2つのモデルが今後の脳科学研究やAI(人工知能)研究に役立つと期待される。

用語解説

*1 連想記憶

体外から刺激を受けて脳に送られた信号を、過去の記憶から連想して新たな記憶状態に導くこと。動物に備わった機能で、生きるために危険な状態から身を守ったり、無害で栄養価があると判断して食べたりするのに役立つ。

*2 大脳新皮質

大脳の表層部を構成する神経回路網を含む組織で、記憶のほか思考や言語などの高次の認知機能を担う。高等な生物ほど大脳の容積に対する新皮質の表面積の割合が大きく、哺乳類で最大である。

*3 ニューロン(神経細胞)

脳や体に張り巡らされた神経の構成単位である細胞。本体である「細胞体」、他の神経細胞から電気信号を受け取るアンテナ役の「樹状突起」、出力する電気信号を伝える「軸索」、軸索の先端にあり神経伝達物質を放出するシナプス小胞などからなる。神経細胞間のつなぎ目をシナプスと呼ぶ。およそ数百億個のニューロンが脳を構成し、1個の神経細胞には数千から数万のシナプス結合がある。哺乳類の脳では、細胞体の大きさはおよそ0.002ミリメートルから0.01ミリメートルのものまである。

参考資料

  • a) I. Tsuda et.al., “Memory Dynamics in Asynchronous Neural Networks”, Progress of Theoretical Physics, Vol. 78, No. 1, 1987
     https://academic.oup.com/ptp/article-pdf/78/1/51/5439802/78-1-51.pdf
  • b) R.B.Liberalquino et.al., "Chaotic Itinerancy in Random Dynamical System Related to Associative Memory Models", Mathematics, Vol.6, No.39, 2018
     http://www.mdpi.com/2227-7390/6/3/39/pdf
  • c) K.Matsumoto, I.Tsuda, "Noise-Induced Order", Journal of Statistical Physics, Vol.31, No.1, 1983
     https://link.springer.com/content/pdf/10.1007%2FBF01010923.pdf
  • d) S.Galatolo et.al., "Existence of Noise Induced Order, a Computer Aided Proof",
     https://arxiv.org/pdf/1702.07024.pdf

問い合わせ先

津田一郎 (中部大学 創発学術院 教授)
電子メール:tsuda[at]isc.chubu.ac.jp ※アドレスの[at]は@に変更してください。
電話:0568-51-9520(創発学術院直通)

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