中部大学のリカレント教育

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メッセージ ~ 人生100年時代の大学 ― 生涯学習社会に向けて

人生100年時代の大学 ― 生涯学習社会に向けて

女87.14歳、男80.98歳、これは平成28年の日本人の平均寿命である。女性の90越えも射程に入り「人生100年時代」も誇張ではない。他方で少子化の急速な進行と相まって、少子高齢化は人類史上初の経験である。その意味で日本は人類史の未来を先取りした少子高齢化社会の「実験場」となっている。

人類未体験時代に突入しているとすれば、従来の発想の延長上に未来を考えることはできない。私の専門の教育学や歴史学の観点からしても新たな発想が必要となる。

国家が制度化した学校教育は、近代化推進には最適であった。全ての子どもが学校で学び「国民」となることで近代国家は作られてきた。産業の工業化にも近代学校はピッタリの制度。しかし脱工業化と地球一体化が一挙に進展し、ネットメディア社会は世界を不安定化させ、世界は激変している。子ども期の学校での知識では対応しかねる時代の中で学校中心の既存の教育システムは破綻しつつある。今の学校社会以後の教育のあり方、それを考える重要なキーワードは「生涯学習社会」である。

生涯学習はユネスコで早くから言われていたが、20世紀末以後、これからの教育の主流とされ、文部科学省でも生涯学習局が筆頭におかれてきた。生涯学習社会とは「いつでも誰でも必要に応じて必要なだけ」学び直しができる社会。「学び」は学んだ分だけ確実に自分を高める。吉見俊哉は「人生大学三回入学説」を唱えている(『「文系学部廃止」の衝撃』2016、集英社)。①18?21歳、②30歳代、就職後10年前後で問題意識に目覚めた自己のバージョンアップ、③定年前後、なお20?30年もある人生の最後のステージを生きるための学び直し。ちなみに25歳以上の学士課程在学生の割合は、OECD(経済協力開発機構)加盟国平均20%(最高はポルトガル36%)の中、日本は2%でダントツの最下位である(2011年現在)。これでは少子高齢化社会日本の「実験」の成功はおぼつかない。

大学は、成人対象のリカレント教育を社会貢献的サービスではなく、正系の大学教育の一環に位置付け、成人学生を重要な正規学生として受け入れる体制をとるべきである。そのためにはリカレントを許容する社会の実現が急がれる。「人づくり革命」を言うなら、成人学習のための環境整備に注力することが政治の最優先課題であろう。

今こそ、未来を先取りするリカレント教育に、大学が本気で取り組む時期に来ている。18歳人口減少をいたずらに憂慮するより、生涯学習社会での自らの位置を再定義し、知の拠点としての大学の社会的責任を果たしていく覚悟、これが求められている。絶えざる学びこそ自己を高め充実した人生を送る秘訣であり、これからの知識基盤社会の源なのだから。

―― 中部大学通信『ウプト』206号より

辻本 雅史 つじもと まさし1969年大学紛争渦中の京都大学に入学。瀬戸内の田舎出には疾風怒濤のなか、文学部で日本史を学び大学院は教育学を専攻。2つの女子大勤務を経て京大の教育学部教員に。定年前に京大を辞め、台湾大学で5年間、異国生活を楽しんだ。水泳で、老いた体力の維持に努めつつ、将棋の棋譜を楽しむ日々。

辻本副学長

辻本 雅史(つじもと まさし)
中部大学副学長
 (リカレント教育担当)

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