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第22回理学教室談話会:DNAのカイラル転移と力学応答

【2011年12月7日】

 

日時 2011年12月7日(水曜日) 午後3時30分より
場所 9号館3階数学ゼミ室
話題提供 奥島輝昭先生(立命館大学理工) 倉辻比呂志先生(立命館大学総合理工)
概要

近年の実験技術の進歩により、DNA1分子の力学応答を詳しく調べられるようになった[1]。例えば、 2重螺旋をほどく方向に少しトルクを加えただけで、DNAの塩基構造が通常の右巻き螺旋のB-DNA と左巻き螺旋のZ-DNAとの間を頻繁に構造遷移することや[2]、さらに強い力に対する応答からS-DNA、 P-DNAなど、多様なカイラリティを持つ塩基構造の存在[3]が明らかにされた。このような力学応答は特殊な実験状況下でのみ現れるのではなく、細胞内の転写や複製でDNAの2重螺旋をほどく際に重要な役割を果たすことが知られている[4]。以上の事実は、遺伝子発現の機構の理解のためにはDNAのマクロ形状とDNAのカイラル構造との相互作用系として DNAの力学応答を取り扱う必要があることを示している。

この問題を理論的に取り扱うため、我々はゲージ原理に基づきモデルを構築した[5]。具体的に
は、DNAの形状が1次元スピノル場で記述できることに注目し、DNA形状と塩基構造との相互作用はゲージ原理で導入した。塩基構造についてはランダウ理論に従い様々なカイラル塩基構造を秩序変数で表現した。このモデルを用いて、文献[2]のB-Z 転移の実験の分析を行った。モンテカルロ法を用い外部トルクに対する応答を数値的に調べた結果、構造転移の外部トルクに対するスイッチ的な応答などの実験結果をよく再現することが分かった。さらに、これらの数値計算結果が核生成理論で解釈できることが分かった[5]。

参考文献
[1] J. F. Marko, Les Houches Session LXXXII, 211-270 (Elsevier, 2005)
[2] M. Lee, et al., PNAS 107,4985(2010)
[3] Z. Bryant, et al., Nature 424,338(2003)
[4] M. D. Wang, et al., Science 282, 902 (1998)
[5] T. Okushima and H. Kuratsuji, Phys. Rev. E84, 021926 (2011)


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