• ページの本文のみをプリントします。ブラウザの設定で「背景色とイメージを印刷する」設定にしてください。
  • ページ全体をプリントします。ブラウザの設定で「背景色とイメージを印刷する」設定にしてください。

生命健康科学部 作業療法学科 牧瀬英幹先生

【2021年2月1日】

牧瀬英幹先生

精神分析、精神病理学、描画療法が専門
人間の精神構造について研究

プロフィール

牧瀬 英幹(マキセ ヒデモト)先生。京都大学大学院 人間・環境学研究科 博士後期課程修了。博士(人間・環境学)。ロンドンのラカン派精神分析組織Centre for Freudian Analysis and Researchにて精神分析の研修を2年間受けた後、大西精神衛生研究所附属大西病院にて子どもから高齢者までの幅広い患者の治療・支援にあたる。2016年4月に中部大学に着任。生命健康科学部 作業療法学科准教授。

東京都生まれ。趣味は音楽鑑賞で、ヘヴィメタルやクラシックなどを聴く。最近はなかなかできていないが、ギターやドラムなどの演奏や作曲をすることもある。また、コーヒーを飲みながらゆっくり読書をすることも好きで、専門書から歴史小説、漫画まで幅広く読んでいる。おいしいコーヒーを求めて、カフェ巡りをすることも。好きな食べ物は寿司で、好きなネタはマグロ、タイ、貝類。

牧瀬先生を Close Up!

先生の研究内容

トーラスとクラインの壺人間の精神をトポロジー(位相幾何学)とし、精神分析実践をトーラスからクラインの壺への変換として捉えた図

子どもの絵

「描画連想法」を通して描かれた子どもの絵

「統合失調症、うつ病、神経症性障害などの心の病が生じるメカニズムとその治療法について、主に精神分析、精神病理学、描画療法の観点から研究を行っています。また、そこから得られた知見をもとに、なぜ人はこういうことで苦しむのか、どうしたら治るのかなど、人間の普遍的な精神の解析・研究もしています。心の病のさまざまな症状は、患者さん一人一人の生き方を巡る問いと密接に結びついています。このため治療では、患者さんが『誕生』や『死』と深く関わる問いを症状からではなく、別の形で問い続けていけるように促していくことが求められます。患者さんが何に対して問題を感じているのか、本人も気付いていないようなことを見つけるために、必要に応じて夢の分析や描画を用いた治療をする場合があります。その中で人間と言語との関係を重視しながら治療を進める描画療法として『描画連想法』という新たな技法を開発しました。描画連想法とは、描画を構造論的に捉え、『紙の交換』という形で解釈としての区切りを入れていく治療法です。この方法を用いることで、患者さんの生き方を巡る問いの再構成が可能になります」

夢に隠されているもの

牧瀬英幹先生2

「子どもの頃、たくさんの夢を見ては、なぜこんな夢を見るのだろうといつも不思議に思っていました。そんな中、高校生の時に古本屋で見つけたジークムント・フロイトの著書『夢解釈』との出会いは、私が研究を志す上で重要なきっかけとなりました。精神分析では、心の病の治療を行う際に夢を用います。なぜなら、夢にはその人が意識できない無意識の欲望が隠された形で表現されるため、それをもとに症状を通してその人がどんなことに悩んでいるかを探っていくことができるからです。皆さんもこれまでに多くの夢を見たことがあるのではないかと思います。印象に残っている夢で精神分析を行うと、皆さんの無意識の欲望が一体どんなものなのかが分かります」

『HANDS-手の精神史』を翻訳

牧瀬英幹先生の本

先生が携わった本。左下:『精神分析と描画-「誕生」と「死」をめぐる無意識の構造をとらえる』(誠信書房)、左上:『発達障害の時代とラカン派精神分析-〈開かれ〉としての自閉をめぐって-』(編著 晃洋書房)、右上:『描画療法入門』(編著 誠信書房)、右下:『HANDS-手の精神史』(訳書 左右社)

「『HANDS』は、イギリスで精神分析の研修を受けていた際にお世話になった、ダリアン・リーダー先生が書かれた本で、共訳者の松本先生から依頼を受け翻訳しました。手は、手遊びが禁止されたり、手を巡るさまざまな儀礼を強要されたりするなど、私たちの身体が両親や社会規範などの他者によって支配される際の焦点となる場所です。その一方で、私たちは自分の身体を触ったり、引っかいたりすることによって、“自分が自分であること”を確認しようとします。時には、自分を支配している耐え難い他者やトラウマ的な記憶から距離を取るために“手を切る”行動として自傷行為をすることもあります。すなわち、手もまた、その人にとっての生き方を巡る問いが表れる場と考えることができるのです。本書の中で例として紹介されている、『アナと雪の女王』の氷を操る姉エルサの手にも、そうした問いを巡る苦悩が隠されています。この本は取り上げる文化の幅が広く、難書すぎない専門書で、とても読みやすい内容になっています。大学の図書館にも本書を置いていただいたので、手の秘密を知りたい方は、ぜひ読んでもらえたらと思います」

先生の学生時代

イギリスの公園にて

留学中イギリスの公園にて。森に迷い込んだ錯覚を起こさせる不思議な空間で、歩いているといろいろなアイデアが浮かびました。

「学生時代は、専門分野の話だけでなく、さまざまなことを大学の友人やバンド仲間と、とことん語り合いました。バンド仲間とお酒を酌み交わしながら夜通し音楽の話に興じ、次の日の講義では眠たくて辛かったという経験もあります。そのような経験が、今の私の思考や人との絆を形作っています。また、今も大切にしている“何事も実際にやってみないと分からない”という考え方が培われたのも学生時代です。頭で考えているだけで分かった気になっていても、実際やってみると全く違うことが世の中にはたくさんあります。留学先のイギリスで自分自身が精神分析を受けた経験もその一つで、その経験は現在、患者さんの治療を行う上でとても役立っています。また、思い立ったら失敗を恐れずに行動するという精神も学生時代に養われたからこそ、人種や宗教が違うなど、さまざまな価値観や文化的背景を持った人たちと関わることができたのだと思います。学生時代や留学先での友人とは今でも交流があり、かけがえのない存在になっています」

メッセージ

牧瀬先生メッセージ

「これから自分はどのように生きていけばよいか。学生時代は、自らのアイデンティティを育んでいく重要な時期です。時には、何もかも嫌になって、思い悩むこともあるかもしれません。しかし、そうした経験もまた、未来の皆さんにとってかけがえのないものとなるはずです。例えば、思い悩むことができた人は、他者の心の機微に気付ける人になれるかもしれません。専門分野の勉強だけでなく、いろいろなことに挑戦する中で、“自分とは何か”という問いを温めていってもらえたらと思います」

ページの先頭へ