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創発学術院 津田一郎先生

【2020年10月1日】

津田一郎先生main

複雑系科学、応用数学、脳神経科学が専門
カオス・複雑系の数理、脳と心の数理構造を研究

プロフィール

津田 一郎(ツダ イチロウ)先生。京都大学大学院 理学研究科 物理学第一専攻博士課程修了。理学博士(京都大学)。新技術開発事業団(現JST)ERATO研究員、九州工業大学助教授、北海道大学教授などを経て、2017年4月に中部大学に着任。創発学術院教授。

岡山県生まれ。休日は内津川河川敷や大学近隣の潮見坂平和公園から落合公園、朝宮公園へ続く遊歩道をランニングしたり、春日井三山(弥勒山、大谷山、道樹山)をストックを使ってトレイルランニングをしている。好きな食べ物は、野菜、卵、そば、スパゲティ、カレーなど。

津田先生を Close Up!

先生の研究内容

津田先生

「雲がさまざまな形に変化するのは、大気の対流運動が乱流という複雑な運動をするからです。このような複雑な自然現象を生み出す法則は複雑である必要はなく、単純で簡単なルールとして数学的に書けることが20世紀後半に分かってきました。典型的には『カオス』という数学的概念がその本質的機構であることが分かっています。複雑な現象は物理現象だけでなく、私たちの生活の中や脳の神経活動などさまざまなところで見られます。私の研究は、このカオスの数学的研究を通じて脳神経活動の複雑さを解析し、脳機能を数学モデルを使って明らかにすることです。そのための研究手段として、カオス力学系という数学の分野を研究し、新しい自律的な秩序形成の理論などを作りながら、脳機能の解明にチャレンジしてきました。最近では、医学部や大学病院の先生方と、てんかん発作の前駆現象を数学的に見つけたり、アルツハイマー病やパーキンソン症候群などの認知症に至る長い時間をかけた、微小な変化を数学的にどう取り扱うかなどを共同研究しています。臨床の先生方との共同研究によって、脳の病態に対する原因、予測、治療に数学から寄与できることに、大変魅力を感じています」

研究を志したきっかけ

津田先生の本

創発学術院内にある、先生の著書や関係した書籍、研究について掲載された雑誌など

「小学生の頃、勉強より外で昆虫採集や釣りをして過ごすことが好きでした。それでも算数の勉強だけは好きで、算数の問題集は、学校でまだ習っていなくても解くことができ、すぐに終わらせてしまうくらいでした。中学生になり数学を学び始めるとますます数学が好きになり、将来は数学者になりたいと考えるようになりました。複雑なもの、常に変化するものに興味があったため、一見複雑に見える脳のさまざまな活動を数学的に明確にし、数学モデルを作り解明していくことはとても興味深く感じました」

神経細胞の成長を説明する数学モデルを開発

神経細胞の分化過程

神経細胞の分化過程に関係する図

3つの球で表しているのはニューロンと2種類のグリア細胞の分化を駆動するタンパク質。「神経幹細胞からニューロンやグリア細胞に分化する過程の数学的構造」(H. Watanabe, T. Ito, and I. Tsuda 2020)より。共同研究者の渡部大志研究員がPythonで作図

「この研究はもともと複雑システムをどう定義するかという問題を考えていて、複雑系の典型例はシステムにかかった拘束によってシステムを構成する部品ができることだと考えたことから生まれたものです。自転車に置き換えて説明すると、自転車を構成する部品の中からハンドルだけを取り外しても、それだけでは機能を持ちません。ハンドルは自転車というシステムの中で初めてその機能を発揮します。自転車には、システムと部品の関係を示す設計図があります。今回の研究はこの設計図を進化に見立ててシステムパラメーターを変化させると、機能部品としてのニューロンやグリア細胞が原始細胞(神経幹細胞を模したモデル細胞)のネットワークの中から生まれてくるという結果になりました。複雑系(分解できない、分解しても意味がないこと)の典型例を一つ作れたと思っています。そして、この研究を通じて私たちが仮説として提案していることは、実際のニューロンたちも細胞のネットワークが外部情報を効率よくネットワーク内に伝えるために、必要な機能部品として進化してきたのではないかということなのです」

先生の学生時代

懇談会

大学院生の時、研究室で行われた海外の先生を迎えての懇談会の様子(左端が津田先生)

「大学時代の最初の2年間は、物理、数学、哲学を集中して勉強し、後半の2年間は専門の物理を習得するのに必死でした。講義中はノートを取らずに簡単なメモを取り、家に帰ってそのメモを頼りに講義を再現するようにしていました。週に1度午後から夕方まで実験の時間があり、その実験が面白くて実験が終わった後や実験のない日も講義や演習が終わってから、先生に交渉して夜中まで実験をさせてもらいました。この時の経験は今でもとても活きていると思います。卒業研究は、BCS理論というノーベル物理学賞を受賞した、超電導の理論の論文を読んで発表しました。関連する本や論文をいくつか読んでから、BCS理論の論文を読み、当時としては完璧に理解できたというところまで取り組みました。大学院での研究は、楽しくもあり苦しくもありという状態が続きました。カオスという数学的に非常に深い内容を理解するのに自分でいろいろと工夫をしていくうちに、核心が分かるようになりました。最初の論文はなかなか研究結果が出ず、この時期は我慢の連続で、最初の結果が出たときは大変うれしかったのですが、どこか間違えているのではないかと不安がつきまとい、何度もチェックをしたことを覚えています」

先生の趣味

「北海道での生活が長く、クロスカントリースキーが趣味です。春日井市は雪が全く積もらないので、冬になると時々札幌に戻り、スキーを楽しみます。全日本スキー連盟公認クロスカントリースキー指導員・検定員の資格をもっており、クロスカントリースキーの大会に多数出場しています。もしクロスカントリースキーについて興味がある方は、相談にのります」

北海道大学内

北海道大学エルムの森にて(2004年冬)

     札幌スキーマラソン大会

     札幌国際スキーマラソン大会にて(2006年冬)

メッセージ

津田一郎先生

「学生時代は24時間すべて自分のためにあるはずです。諸事情でそうでない方もいるでしょうが、原理的には学生時代というのはそうあるべきものです。学生時代にしっかり勉強するかしないかで、その後の人生には大きな差がつくことを想像してください。まだ実感が湧かないと思いますが、大学の4年間、必死で勉強したかそうでないかでは、早くて10年後、遅くとも20年後には大きな差になって現れます。勉強をすることで、自分で考える力がつき、チャンスをものにすることができるようになります。物事をもっと深く考え、表面的な物事に惑わされないように、基礎的な勉強をしてください」

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