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GM破綻の衝撃(1) 岐路に立つガリバー企業のゆくえ(国際文化学科 教授:河内信幸)

【2009年6月10日】

史上最大の製造業破綻

アメリカの自動車産業は、2008年9月中旬に始まった金融危機の煽りを受け、販売台数が落ち込んで巨額の負債を抱え、“ビッグ・スリー”全体が未曾有の経営危機に陥ってきた。その結果、まずクライスラーが本年4月末に連邦破産法11条(Title 11 of the US Code-Bankruptcy)(いわゆる“チャプター・イレヴン”、日本の民事再生法に相当)を申請すると、GMも、6月1日、ついにニューヨーク連邦破産裁判所に“チャプター・イレヴン”の適用を申請し、クライスラーと同様に経営破綻した。1908年に合併と買収を重ねて誕生したGMは、それから約 1世紀を経てついに破綻という事態を迎えたのである。

2009年3月末時点で、GMの負債総額は1728億ドル(約16兆4000億円)、資産規模は822億ドル(約7兆8000億円)であり、破綻企業の資産規模としてはリーマン・ブラザーズ、ワシントン・ミューチュアル、ワールドコムに次ぐものであるが、アメリカの製造業としては過去最大の破綻となった。GMは、2008年にトヨタ自動車に抜かれるまで、77年間も自動車文明のチャンピオンとして君臨し、これまでヨーロッパやアジアに生産拠点を構え、従業員数が世界で24万6千人にのぼるガリバー企業の代表格であった。

連邦破産法11条の適用

連邦破産法11条は、旧経営陣が経営を続けながら、負債や労務費の削減などに取り組むことができる「再建型」の倒産の手続きを規定したものであり、事業を中止して会社をたたんでしまう「清算型」とは性格が異なる。

同条項の適用申請から120日以内に経営再建計画を提出し、債権者の過半数、及び債権額の3分の2以上の賛成を得て裁判所の許可がおりると手続きを完了し、再建への道が開かれる。もしも再建計画の承認が得られない場合は、手続きを断念し、「清算型」の破産法7条に移行する。

連邦破産法11条のように、再建を前提とした法的処理に踏み切る際、債務者や債権者などの関係者が再建計画を事前にまとめておく倒産方式を「事前調整型破綻」(「プリパッケージ型」)と呼び、今回のクライスラーやGMも、このシステムで再建の道を探る。再建計画について、債務者や債権者などが事前に合意していれば、連邦破産法の申請から短期間で計画が承認されやすく、企業イメージの低下や取引中止を極力抑えて再生に取りかかることができるメリットがある。

連邦破産法11条の適用により、GMは株式の上場が廃止され、従来の雇用契約や出資・融資契約を白紙に戻して財務基盤の改善が図られる。なお、連邦破産法 11条の適用を申請する直前の5月29日、ニューヨーク証券取引所のGM株価は、前日終値よりも0.37ドル(33%)安い0.75ドルで取引を終えた。GMの株価が1ドルを割り込むのは、大恐慌が深刻化した1933年以来76年ぶりのことである。

GM再建の方向性

アメリカ政府は、今後も301億ドル(約2兆8600億円)にのぼる追加支援を行うとともに、新生GMの株式の約6割を取得し、事実上の「国有化」により再建を目指す方針である。アメリカ政府がGMに供与する資金は、今回の追加支援を合わせると、総額約500億ドル(約4兆7500億円)にものぼり、GM車の製品補償も政府が支援するため、3億6100万ドル(約340億円)が積み立てられることになる。また、カナダ政府とオンタリオ州政府も計95億ドル (約9300億円)を融資し、約12%の新GM株を取得する方針である。

オバマ大統領は、「国有化」が「新生GMの始まり」であり、「GMの成功を助ける唯一の方法だ」と述べ、GMのフレデリック・ヘンダーソン最高経営責任者 (CEO)も、記者会見で「GMにもう一度チャンスが欲しい」と訴えた。しかし、同時にヘンダーソンCEOは、GMが株式を再上場して「国有化」から脱するのに1年以上かかるとの見方も示した。

GMは、今後裁判所の管理下で、シボレー、キャデラック、ビュイックなどの主力ブランドや優良資産を受け継ぐ「新GM」と、不採算授業などを引き継ぐ「旧GM」に分離される。そして「新GM」は、巨額の債務や系列販売店の削減を進めて債務超過状態の解消に努め、60日から90日で“チャプター・イレヴン” の規制下から脱却することを目指す。また「旧GM」は、旧経営陣の大半が交代し、資産売却などを進めて清算に至る見通しである。

2009年6月10日

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