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オックスフォード便り1(教授:中野 智章)

【2017年5月25日】

 

海外研究の機会を頂いて、4月からイギリスのオックスフォード大学に滞在しています。日本は既に30度を超える暑さのようですが、こちらも朝晩10度、日中でも20度ほどだったのが、5月も終わりに近づきだいぶ気温が上がってきました。次第に日も長くなり、今はちょうど日の入りが9時ごろです。


オックスフォード大学の中央図書館閲覧室

一年の最終学期にあたるこのTrinity Termは毎日さまざまな学部の卒業試験が行われていて、試験を終えた正装の学生たちが小麦粉や髭剃り用のクリームを掛けられ、クラッカーを鳴らされるなどの手荒い祝福を受け、シャンパンを片手にまるでゾンビのような姿で街中を歩く姿に良く出くわします。この間は「終わった!」と叫ぶ学生を見ました。卒業試験は一発勝負で追試験はないため、プレッシャーは相当なものです。あと1ヵ月弱でそれも終わり、新年度前の長い夏休みに入ります。

私はと言えば、今を去ること20数年前に所属したカレッジ(学寮)の宿舎に住み、エジプト学(古代エジプト文明を研究する学問分野)の研究所に通っています。

  
研究所が付属するアシュモレアン博物館                                所属しているカレッジのSt Edmund Hall

昼食はカレッジで取り、そのあとさまざまな分野を専攻する教員とラウンジで歓談し、それからまた研究所に戻っていろいろな調べ物をしながらパソコンを打ち、仲間と議論をし、セミナーに出るなどしているところです。自分が教わった先生は既に名誉教授となっておられますが時折会って話をしますし、今の教員もかつて共に学んだ仲間なので、お互い年は取りましたが、ごくごくアットホームな雰囲気の中で過ごしています。他には、遺物の調査でロンドン大学や大英博物館などに出掛けることもあります。

ただこう書くとすべてが順調であるかのように聞こえますが、実際は日本での車中心の生活とは異なり、久しぶりに良く歩いている(宿舎から研究所やカレッジをまわると、平均して一日5kmは歩きます)ために脚はクタクタ、研究所の図書館で本を読んでいても、黄色のライトでは数時間も根を詰めると目がショボショボ、そして昼も夜もカレッジの食事では胃がもたれるので、夕食用の食材をスーパーで買い、重い荷物を持ってフラフラと宿舎へ帰る毎日です。宿舎のすぐ裏には広大な大学公園があり、斜めに横切ると近道なので、リスが周りを走る中、時にはクリケットをやっている様子を眺めながら家路についています。


大学公園

なおイギリスがEUを離脱するBrexitを選択したことは日本でも話題となりましたが、その影響がこれからどんな形で現れるかは気になるところです。個人的には物価の上昇に驚かされています。先日もドイツ出身の友人と話しましたが、いったいみんなどうやって生計を立てているのかと思うほど。

そんな最中にマンチェスターで大規模なテロが発生しました。社会におけるさまざまな格差の拡大を改めて感じます。メイ首相は移民の規制を強化するなどの方針を打ち出し、経済活動にも介入する姿勢を強めていますが、例えば、外国企業がイギリスを離れていく中で人びとの生活や価値観などはどう変化していくのか。25年前の学生時代には、国民に一律の税を課す人頭税(poll tax)が時のサッチャー首相によって強行されましたが、それとはまた異なる形でどのようにこの国が動いていくのかを、研究とは別にしばし観察して帰国したいと思います。

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