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フロントランナー時代の工学教育に求められるもの

以上の考察に加えて、「21世紀の工学のあるべき姿」、「工学部・工学研究科の将来展望」、「工学部・工学研究科を取り巻く環境」、「経済界が求める人材」、「これからの技術者(研究者を含む。)に求められる資質」、「産業界が求める教育方法」および「企業で必要とされる技術者」に関する検討から、フロントランナー時代を迎え、キャッチアップ時代の工学教育では“不足しているもの”を探り出すと、次の7点が挙げられます。

1. 学生と教員の教育に対する姿勢
教員が教えることから学生が学ぶことに教育の主体を移します。学生である皆さんに学ぶ意欲がなければ、何事も習得することができないからです。したがって、これからの工学部教育では、皆さんが学びたくなるような状況をつくり出すことに努めます。
2. 個の人間形成に必要な教養
職場を含む社会生活において、自らの論理と信念でもって正しく判断する力を養うに必要な教養です。
3.自主・自律・自発性
日本は、民主主義国家と言いながら、先進諸国の中では、個人の力が組織のそれに比べて弱く、個人が組織の中に埋没する傾向が強くあります。しかし、技術者が、社会に対して、正しいことは正しい、正しくないことは正しくない、と主張出来なければ、報道機関をにぎわす企業の不祥事が絶え間なく発生することになります。このようなことを起こさないためにも、これからの技術者には、個の人間形成に必要な教養に裏打ちされた自主・自律・自発性が強く求められます。
4. 創造性・独創性
創造性に満ちた独創的なデザイン能力(必ずしも解が一つでない課題に対して、種々の学問・技術を統合して実現可能な解を見つけ出していく能力)などです。
5. 総合的視野
すべてのことに対して広い視点から考察出来る素養のことです。
6. 工学倫理・技術者倫理的洞察力
例えば、経済的には有利であるが、環境面や安全面で危惧がある、といったような問題に対する対処の仕方です。
7. コミュニケーション能力
日本語と外国語による「話す、聞く、書く、読む」の基礎能力です。

以上の7点が、フロントランナー時代の技術者教育に欠かせないことを、ハードな“モノづくり”の場合を例にして示せば、次の通りです(下図参照)。

フロントランナー時代におけるモノづくりの技術に必要な知識・能力

“モノづくり”の技術には、材料特性と作動原理で決まる入り口側の制約と社会が受け入れるかどうかの出口側の制約があります。例えば、ハードなモノを作る場合には、それを作るに耐えられる材料があるかどうか、それを動かす適切な作動原理があるかどうかが入り口側の制約であり、出来上がったモノを、経済・環境・安全面などの観点から、社会が受け入れるかどうかが出口側の制約です。技術者が、入り口側の制約を克服するためには、工学に共通な普遍的な基礎知識と専門知識ならびにそれらの創造的応用力を縦横に生かした課題設定力と設定された課題の解決力が必要であり、出口側の制約を突破するためには、個の人間形成に必要な教養をフルに生かした総合的視野に基づく工学倫理・技術者倫理的洞察力が不可欠です。また、プロジェクトチームを組んで、入り口側の問題や出口側の問題に関して、一人ひとりが互いにアイディアを出し合い、それらを融合して、より良いアイディアに進化させていくためには、一人ひとりが十分なコミュニケーション能力を持っていることが必要です。

このように、ハードな“モノづくり”の場合を例に取り上げても、上述した“フロントランナー時代の工学教育として不足しているもの”の7つの事柄がすべて含まれていることが分かります。

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