中国連携推進プロジェクト

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JST「さくらサイエンスプラン」で同済大学浙江学院、嘉興学院、紹興文理学院から学部学生23人の短期研修を実施

【2017年10月26日】

国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の平成29年度「日本・アジア青少年サイエンス交流事業(さくらサイエンスプラン)」の支援を受けて実施しました。

中部大学では、2017年10月3日(火曜日)から10月11日(水曜日)の9日間、中国の同済大学浙江学院の学生7人、引率教員2人、嘉興学院の学生13人、引率教員1人、紹興文理学院の学生3人を招聘「持続可能社会を実現するための環境、エネルギー、情報技術応用、生物応用等の先進的科学技術およびものづくり技術の交流発展」をテーマに「2017年度 同済大学浙江学院・嘉興学院・紹興文理学院 中部大学研修」を実施しました。

中部大学到着時の記念写真
中部大学到着時の記念写真

【1日目】 10月3日(火曜日) ― オリエンテーションと歓迎会 ―

中国・同済大学浙江学院、嘉興学院、紹興文理学院の学生23人、引率3人の合計26人の一行が無事来学し、歓迎の記念撮影を終え、オリエンテーション会場へ向かいました。

オリエンテーションでは、まず、松尾直規中国連携推進部長・工学部長が歓迎のあいさつを行い、同済大学浙江学院の劉先生と嘉興学院の王先生があいさつを行いました。続いてプログラムの受け入れ先である工学部事務室の鶴見事務長がプログラム概要を説明し、国際センター事務部の鈴木次長が中部大学の概要を紹介しました。そして、招聘学生および中部大学関係者が1人づつ自己紹介を行いました。招聘学生は日本語および英語で自己紹介が行い、日本滞在経験がないにもかかわらず日本語が話せる学生がおり、中部大学関係者を驚かせていました。

その後、一行は図書館、民族資料博物館、総合グラウンド、不言実行館、国際交流プラザを見学し、早くも「キャンパスがきれい」「日本は美しい」との感想が口々に聞かれ、朝早い出発だったにも関わらず疲れも見せずに、初めて目にする日本の大学に感銘を受けている様子でした。

午後6時からは歓迎会が行われ、辻本雅史副学長・国際センター長の歓迎あいさつに始まり、セミナー担当の教員や中国出身の留学生らを囲んで和やかな雰囲気の中、日本で初めての食事を楽しみました。

オリエンテーションの様子
オリエンテーションの様子

図書館を見学
図書館を見学

歓迎会の様子
歓迎会の様子

【2日目】 10月4日(水曜日) ― 工学部と応用生物学部の概要を知る ―

2日目は午前に工学部、午後に応用生物学部について学びました。

工学部のセミナーはファカルティールームで工学部・工学研究科の概要に始まり、工学部の全8学科について各学科の教職員から説明を受けました。

午後は応用生物学部。今回の研修生は工学部ばかりであったので、応用生物学部は本学にある理系学部としてその学習内容や研究内容について、長谷川浩一准教授による講義で概要を把握し、以下の場所の見学で内容を確認しました。

・ 大場裕一研究室(環境生物科学科、発光生物学)
・ 墨泰孝研究室(応用生物化学科、土壌生態学)
・ 長谷川浩一研究室(環境生物科学科、寄生虫・害虫学)
・ 武井史郎研究室(環境生物科学科、魚類学)
・ 金政真研究室(環境生物科学科、応用微生物学)
・ 食品プラント(食品栄養科学科施設、根岸晴夫教授)
・ 植物工場および温室(応用生物学部施設、堀部貴紀助教)

参加者自身の専門分野とは異なる講義・見学ではありましたが、生物という身近な存在を扱うものであり、皆が関心を持って受講していたのが印象的でした。

工学部セミナーの一コマ
工学部セミナーの一コマ

応用生物学部セミナー
応用生物学部セミナー

研究室訪問(環境生物科学科)
研究室訪問(環境生物科学科)

食品プラントを見学
食品プラントを見学

【3日目】 10月5日(木曜日) ― 中部電力、東邦ガスを見学 ―

3日目は企業見学を行いました。

午前は中部電力総合技術研究所を訪問し、技術開発本部の概要についての説明の後、2班に分かれて実験棟の見学を行いました。

住宅用環境実験棟では太陽光発電の見学および、実際の模擬ハウスにおいて200個以上のセンサーによる湿度、湿度管理実験、床暖房の熱効率の実験施設の見学を行いました。

産業電化実験室では連続式アニール炉、えびせんべいの味液塗布乾燥機、カップケーキなどを加熱する電気式食品焼成機、マイクロ波遠赤外線併用加熱炉、マイクロ波併用粉体加熱装置によるコーヒー焙煎豆の熱処理の影響などの開発現場を見学しました。

浮体式洋上風力の水理模型実験設備では海洋の風や波を実験的に起こし、浮体式の洋上風力発電の開発に関する説明を受けました。

ヒートポンプ試験設備の「ヒーポンらぼイースト」では、大型空調機器、大型製造プロセス用ヒートポンプの研究開発、「ヒーポンらぼウエスト」では、小型空調機器、小型製造プロセス用のヒートポンプの研究開発の説明がありました。

中部電力総合技術研究所・浮体式洋上風力水理模型実験設備
中部電力総合技術研究所・浮体式洋上風力水理模型実験設備

中部電力総合技術研究所・住宅用環境実験棟
中部電力総合技術研究所・住宅用環境実験棟

午後は東邦ガス株式会社技術開発本部、ガスエネルギー館を訪問しました。最初に東邦ガスが日本の「ものづくり」の中心拠点である中部3県(愛知県、岐阜県、三重県)にガスを供給する会社であること、ガス取扱量が日本で3番目に多い会社であるという紹介がありました。さらに技術開発本部は、技術企画部、技術研究所、商品開発部からなること、また、それぞれの部門の概要説明を受けました。

その後、最先端技術を駆使したスマートエネルギーハウスを見学し、洗面所の鏡で体重、体脂肪、消費カロリー、心拍数などを計測できるヘルスチェックミラーおよび入浴環境を快適に整える入浴管理モニターの見学、家の情報を一元管理できるモニタリング設備を整えたリビングの見学をしました。研究開発の段階とのことですが、近未来を感じさせるものでした。また水素による燃料電池車の見学と試乗、また水素ステーション整備に向けた技術開発の説明がありました。

ガスエネルギー館では液体窒素による化学の実験デモンストレーションを見学、また、様々なエコ・省エネに関わるデモンストレーション機器を実際に手で触れながら、興味深く見学しました。

日本のエネルギー開発に取り組む代表的な企業2社の最先端の開発の現場を見学し参加者は大いに刺激を受けた様子でした。

東邦ガス・ガスエネルギー館
東邦ガス・ガスエネルギー館

東邦ガスでの記念写真
東邦ガスでの記念写真

【4日目】 10月6日(金曜日) ― 工学部研修の後、住友理工を見学 ―

4日目は、午前に工学部の主要施設である「CAD教育施設」「SCOPE」「分析計測センター」「工学デザインルーム」の見学を行いました。

分析計測センターでは、電子顕微鏡や核磁気共鳴装置など高度な分析や計測ができる設備が整っています。これらの設備について説明があり、実際にその装置を目の当たりにしました。

「CAD教育施設」では機械工学科などで機械やその部品などの設計をCAD (Computer-Aided Design)を使って行う教室で、Solid Works というソフトを使った実習なども行われました。中部大学では自動車業界で実際に使われている CATIA というソフトも導入している点が特長的であると説明がありました。

「SCOPE(Scientific Computing Opportunities in high-Performance Environment)」では、Windows、Mac OS、ワークステーションを備えたコンピュータや LEGO ロボット、本来は隠されているが学習効果を高めるためにガラス張りのスペースで運用されているサーバーなど参加者は興味深く見学していました。

分析・計測センター
分析・計測センター

CAD教育施設で Solid Works 実習
CAD教育施設で Solid Works 実習

コンピュータ実習室「SCOPE」
コンピュータ実習室「SCOPE」

伝統和風建築「洞雲亭」
伝統和風建築「洞雲亭」

昼食後、学内にある伝統和風建築物である「工法庵」「洞雲亭」「爛柯軒」を見学した。これらの建築物もすべてが本学工学部建築学科の教員や学生たちの教育・研究に関わっていることなどが参加者には印象的だったようです。また、引率教員と各大学の代表学生の全6名は、石原修学長を表敬訪問しました。

石原修学長を表敬訪問
石原修学長を表敬訪問

午後2時過ぎに大学を出発し、小牧市の住友理工株式会社を訪問しました。

まず、セミナールームで会社紹介のビデオを見た後、製品の展示施設を見学し、実際の製品を体験し、また実演を受けながら説明を受けました。

住友理工株式会社ではゴムを中心とする高分子材料技術により、自動車部品の「防振ゴム」および「ホース」を中心に製品展開を図ってきましたが、その技術を応用し、建物の免振装置やコピー機のロール、また体圧を感知する介護ベッドや、柔らかいゴムを利用した健康介護製品など、新製品の開発にも力を入れていることについて説明がありました。その後、セミナールームに戻り、活発な質疑応答が行われました。

住友理工株式会社で
住友理工株式会社で

【5日目】 10月7日(土曜日) ― 工学部学科別セミナー① ―

5日目は、工学部の3学科について深く学びました。

機械工学科では、機械工学実習室で旋盤、溶接、放電加工、マシニングセンターなどの設備やそれらを使った実習について説明が行われました。さらに、鈴木浩文教授の研究室を訪問し、専門である超精密加工技術の研究・開発の現場を見ることができました。

ロボット理工学科では、ヒト型ロボットや被災地での活動を見据えて開発中のロボットなどを体験し、さらにロボットによるサッカーの取り組みについて紹介がありました。

今回の参加学生23人のうち、化学分野を専攻している学生が半数を超えていたため、午後は応用化学科のための時間となりました。まず、二宮善彦教授より学科の特長の説明があり、その後、3つのグループに分かれて順に二宮教授(環境化学工学)、饒村修准教授(有機合成化学)、籔内一博准教授(超分子化学、有機機能材料)の各研究室を見学しました。

その後、セミナールームで応用化学科の研究紹介をポスターセッションという形で行われました。大学院生を中心に学部生も加わって各研究室の紹介が行われ、参加者たちは希望のポスターの前で熱心に説明を聞いていました。なお、説明は英語や日本語で行われ、通訳を中国からの大学院生たちが担当したり、また、留学生たちも自分の研究室の紹介をするという会場は活気に包まれ盛況でした。

ロボット理工学科の取り組みを学ぶ
ロボット理工学科の取り組みを学ぶ

環境化学実験室(応用化学科)
環境化学実験室(応用化学科)

応用化学科ポスターセッション
応用化学科ポスターセッション

【6日目】 10月8日(日曜日) ― トヨタ産業技術記念館の見学と名古屋市内視察 ―

6日目は日曜日。午前8時30分すぎにホテルを出発し、名古屋へ。名古屋駅で国際関係学部の学生たちと合流し、徒歩でトヨタ産業技術記念館に向かいました。

10時に館内に入り、トヨタの歴史を学んだ。自動車のイメージが強いトヨタですが、その創立は織機からであったことは印象深かったようです。自動車生産の歴史についても深く学ぶことができました。

午後は国際関係学部の学生や留学生らとともに名古屋市内視察へと移りました。名古屋城や熱田神宮を訪れ、日本の歴史や文化にも触れた1日となりました。

トヨタ産業技術記念館で
トヨタ産業技術記念館で

トヨタ創業期の紡糸機
トヨタ創業期の紡糸機

トヨタの歴史を感じる
トヨタの歴史を感じる

自動車展示ホール
自動車展示ホール

【7日目】 10月9日(月曜日) ― 工学部学科別セミナー②とポスターセッション交流会 ―

7日目は工学部の5学科「都市建設工学科」「建築学科」「電気システム工学科」「電子情報工学科」「情報工学科」について深く学びました。

午前に行われた都市建設工学科セミナーでは、学科の研究領域に関する説明の後、測量実習の方法を機器を使って学びました。引き続き行われた建築学科セミナーでは、学科の説明の後、製図室を見学しました。CADなどコンピュータを利用した製図も行われますが、その基本として製図板を使い、自らの手で製図する教育を重視していることが説明されました。次に訪れた建築資料制作室では、源氏物語の住まいを緻密に再現した模型が展示されており、建築学の領域の広さを感じ取ることができました。その後、都市建設工学科でも利用する材料構造実験施設を見学しました。さらに居室の環境を分析・計測できる建築環境実験室も見学しました。

午後に行われた電気システム工学科セミナーでは、学科の研究領域の説明に続いて、プラズマ応用実験室を訪れ、実験の進め方などの説明を受け、その後、プラズマ実験室を見学しました。電子情報工学科セミナーでは、「ナノカーボン素子によるIoTシステムと分散型自然エネルギーの活用」について学びました。情報工学科セミナーでは情報工学の中でも特に画像認識を中心とした研究事例の紹介が行われました。

午後3時15分からは、ポスターセッション交流会として、工学部の8つの学科から大学院生や学部生により約20のポスター展示やデモンストレーションが行われました。参加者は興味がある分野に行き、説明を受けたりデモンストレーションを見たりしました。お茶とお菓子を囲んだ交流会を兼ねており、研究だけでなく、学生生活や趣味などについても情報交換するなど、活気ある会となりました。

材料構造実験施設(中部大学)
材料構造実験施設(中部大学)

プラズマ実験室(中部大学)
プラズマ実験室(中部大学)

活気あふれるポスターセッション交流会の様子
活気あふれるポスターセッション交流会

【8日目】 10月10日(火曜日) ― 施設見学、成果発表会、そして歓送会 ―

8日目は本学の研修最終日となりました。

午前は施設見学として3箇所の見学を行いました。

「超伝導・持続可能エネルギー研究センター」では超伝導直流送電システムの基礎研究から実用実験に至るまでのプロセスの説明を実際に使われている超伝導ケーブルとそれを使った実験設備を目の前に説明を受けました。20メートルからスタートした実験が成功し、その後この場にある200メートルの実験を終え、昨年は北海道・石狩市で1キロの実証実験にも成功したと説明がありました。将来、この超伝導送電システムが世界中を駆け巡ることになるかもしれないという夢のある研究であることが紹介されました。

「国際GISセンター(デジタルアース研究センター)」では、GISを活用したグローバルな情報管理について学びました。ドローンを活用したネパールの山岳地形調査などの事例は参加者が最も興味を持ったようです。

「スマートグリッドシステム」の紹介では、スマートBEMS(Building Energy Management System)を利用して電力を効率良く利用するシステムの説明を受けました。夏季の電力をもっとも消費する時期に電力の予想消費量が基準を超える場合に教職員向けに自動的にメールを送り節電を呼びかけるシステムや、各学部に設置されたモニターで学生たちにもエネルギーの大切さを認識してもらうなど、中部大学が推進する「エコ・キャンパス」への多方面からの取り組みを学ぶことができました。

超伝導・持続可能エネルギー研究センター
超伝導・持続可能エネルギー研究センター

デジタルアース研究センター
デジタルアース研究センター

スマートグリッドシステムを学ぶ
スマートグリッドシステムを学ぶ

午後は、この1週間の研修で学んだことをまとめるグループワークを行いました。最終日にこのグループワークとその後の成果発表会を行うことについては初日のオリエンテーションで伝えられており、つねにこれを意識して過ごしていたグループも多く、この時間は、午前中の施設見学の情報を入れることと、発表内容の確認が中心だったようです。

午後3時すぎから成果発表会が行われました。どのグループもパワーポイントをはじめとしたプレゼンテーションソフトを巧みに活用し、また、不慣れな日本語をスライドに入れたり、発表時も日本語を交えるなど、誠心誠意、心のこもった発表が多く、このプログラムに真摯に取り組み、少しでも多く学ぼうという意欲をうかがうことができました。グループごとの発表ではありましたが全員が発言する機会を持つよう伝えていたこともあり、全員から研修の感想が聞けたのは意義深いことです。研修で行ったセミナーの一つ一つ、見学で訪れた学外の工場や施設の一つ一つについて、各参加者がそれぞれ何かをつかんでいることが伺える発表でした。

成果発表会に続いて修了式が行われ、松尾直規中国連携推進部長から参加者一人ひとりに修了証と初日に撮影した集合写真のプリントが手渡されました。最後に全員で記念写真に収まり、修了式を終えました。

午後6時から行われた歓送会では、セミナー担当教員や大学院生、国際関係学部の学生なども交え、この1週間の思い出や将来について語り合う様子が見られました。

成果発表会では日本語も交えたプレゼンテーションも
成果発表会では日本語も交えたプレゼンテーションも

修了式後の記念撮影
修了式後の記念撮影

【9日目】 10月11日(水曜日) ― 帰国 ―

9日間の多忙な活動の疲れも見せず、元気いっぱい手を振る学生たちを乗せて、午前9時、バスはホテルを出発し、中部国際空港に向かいました。

出発から帰国まで9日間という短期間の研修でしたが、日本のものづくりの中心地「愛知」で、日本の技術を支える工学の基礎から応用まで、また、研究開発から実用化までを歴史的な背景をも含めて多方面から複合的に学ぶことができた実りの多い研修でした。参加した23人の学生の中から過去の先輩たちのように再来日を果たし、日本で学び将来、グローバルに貢献できるエンジニアが育つことを祈っています。

さくらサイエンスプランの公式サイトでも紹介されました

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